近年、M&A業界は事業承継や事業拡大のニーズ増大を背景に、国内外で注目を集めています。その中でも「M&A仲介営業」の役割は、単なる営業にとどまらず、企業の将来を左右する戦略的なポジションとして大きな注目を浴びています。
経営者との直接交渉から契約締結に至るまでを一貫して支援し、さらには高額なインセンティブが期待できる点が魅力です。一方で、専門的な知識や高いコミュニケーション力が求められ、厳しい側面も併せ持ちます。本記事では、M&A仲介営業の仕事内容ややりがい、必要とされるスキル、さらにはキャリアパスまで詳しく解説します。
「キャリアアップを狙いたい」「高収入を実現したい」という20代後半~30代前半のビジネスパーソンを中心に、M&A業界転職の成功ポイントも徹底解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。

転職エージェント兼マネージャー
M&A JOB BOARD 稲田 成秀
いなだ なるひで
早稲田大学法学部卒業後、不動産業界を経て、医療系のキャリア支援に従事。株式会社WILLCOでは、主力事業の責任者として事業拡大を牽引。最優秀エージェント賞を複数回受賞し、役員採用や事業承継仲介に携わる。現在はM&Aキャリア開発事業部の事業責任者を務め、豊富な知見に基づくのキャリア支援・採用支援を通し、業界全体の“働きがい実現”に尽力している。
M&A営業とは?その背景と基本的な仕事内容
1. M&A営業が注目される背景
近年、日本では後継者不足に悩む中小企業が急増しています。さらに、国内外での事業拡大を狙う企業も多く、M&A(合併・買収)がビジネス戦略の要として活用されるケースが増えました。
- 2021~2022年には国内M&A件数がリーマンショック後を上回る最高水準を記録
- 中小企業の99%超というマーケットの大きさ
- 大企業でもグローバル進出に伴う買収案件などが活発化
こうした潮流を受け、M&A仲介会社や金融機関のM&A部門では人材が不足しており、業界としても積極的に採用を行っています。とりわけ、企業と企業を繋ぐ営業力を持った人材は需要が高く、今後もさらなる成長が期待される領域です。
2. M&A営業の仕事内容
M&A営業は、企業の合併・買収案件を発掘し、契約締結(クロージング)までを一貫して支援する「調整役」としてのポジションです。具体的には下記のような業務フローを担当します。
- 売却ニーズのある中小企業オーナーを探す
- 買収ニーズを持つ大手企業への提案
- 業界動向のリサーチや企業リスト作成
- 売り手・買い手それぞれの希望条件すり合わせ
- バリュエーション(企業価値評価)資料の作成・説明
- 経営者間の面談調整・信頼関係構築
- 法務・財務デューデリジェンスの調整
- 最終条件の詰め・契約書作成のサポート
- 成約時にインセンティブ(成功報酬)を獲得

M&A営業は交渉力と同時に「プロジェクト管理能力」も重要です。複数の専門家やクライアントとやり取りするうちに、自然とマネジメントスキルも磨かれます。
3. M&A営業のやりがいと厳しさ
やりがい
- 企業の将来を左右する大きな仕事に携われる
- 経営者から直接感謝される達成感
- 20~30代で年収1,000万円以上も現実的
厳しさ
- 案件成立まで数ヶ月~1年以上かかる場合もあり、根気が必要
- 条件交渉や先方都合で案件が白紙になるプレッシャー
- 繁忙期には深夜残業や土日対応が続く激務の可能性

ハードワークにはなるものの、短期間で飛躍的に成長できる業界です。忍耐力を持って取り組めば得られるリターンは非常に大きいです。
M&Aコンサルタントに求められる営業力・専門知識・コミュ力
1. 営業力:新規開拓と信頼構築
M&A営業はBtoB営業の究極形とも言われます。一般的な商材営業と異なり、経営トップへのアプローチが中心となるため、高い提案力や課題解決力が求められます。
- 潜在的な売り手・買い手のリストアップ
- 経営者の悩み(事業承継、シナジー拡大 etc.)のヒアリング
- アプローチ手段:電話・メール・イベント・セミナー
- 経営者同士の懸け橋となるコミュニケーション
- 多様な業界や企業規模に対応する柔軟性
- 長期的な関係性を築くフォローアップ

M&A営業は「売り手・買い手」双方が納得できるポイントを探ることが大切です。各社の事情を深く理解していないと表面的な提案に終わってしまうため、本質的なヒアリング力が非常に重要です。
2. 専門知識:財務・会計・法務の理解
財務諸表や企業価値評価(バリュエーション)の基礎はもちろん、会社法や契約実務に関する最低限の知識も求められます。
- 簿記2級程度の知識
- PL(損益計算書)、BS(貸借対照表)の分析
- DCF(ディスカウント・キャッシュ・フロー)などのバリュエーション手法
- NDA(秘密保持契約)、LOI(基本合意書)などM&A関連契約の基本
- 会社法、金融商品取引法など主要な法律・規制
- 弁護士・会計士・税理士など専門家との連携

未経験であっても、最低限の用語や概念を理解しているだけで書類選考の合否が変わるケースも多いです。勉強中であることをアピールするだけでもプラス評価につながります。
3. コミュニケーション能力:利害調整と交渉スキル
M&A営業の核心は交渉力です。互いに異なる狙いや意向を持つ複数のステークホルダーが絡むため、合意形成のプロセスをリードする能力が必須となります。
- タイトなスケジュールで進む案件でも、各専門家や当事者をしっかり取りまとめる
- 経営者の意見が対立した場合の軌道修正
- 双方の落としどころを探りつつ、譲れないポイントは押さえる
- 資料やデータを根拠に、説得力ある説明を行う
- 時には妥協策を提示し、関係性を悪化させないバランス感覚

コミュニケーション力と一口に言っても、ヒアリング・交渉・プレゼンなど多岐にわたります。特に経営者同士の話し合いをサポートする際は「経営の視点」に立った発言が求められます。
M&A営業の年収・キャリアパス
1. 年収の相場と報酬体系
M&A業界の年収水準は全業界でもトップクラスです。大手M&A仲介会社では下記の特徴があります。
- 平均年収1,000万~1,200万円超
- 20代で年収1,000万円、30代で年収2,000万円以上も珍しくない
企業規模・ポジション | 年収目安 |
---|---|
未経験入社(初年度) | 500万〜800万円程度 |
3〜5年目 | 1,000万〜1,500万円程度 |
マネージャークラス以上 | 2,000万円超(大型案件次第で変動) |

インセンティブ(成功報酬)制度がベースとなっているため、成果が直接収入に結びつきやすいのが特徴です。営業としてのやりがいを強く感じられる点でもあります。
2. M&A仲介営業で広がる代表的なキャリアパス
M&A仲介営業で培った知識やスキルは、市場価値が高く、多様な業界・職種で活かすことができます。以下では、M&A仲介営業からの転職先として特に人気・需要の高い5つの選択肢をご紹介します。
(1) 金融機関(銀行・証券会社など)

低金利や市場環境の変化に伴い、金融機関が「M&Aなどの手数料ビジネス」を強化している流れから、M&A仲介営業の経験がある人材は銀行・証券会社のM&A部門で重宝されています。
- 中小企業の事業承継案件から上場企業の買収案件まで幅広く対応
- 既存の法人取引先と連携しながらM&Aマッチングを行うことも多い
- M&Aアドバイザリーのほか、株式公開(IPO)関連業務など投資銀行業務全般に携われる
- M&A仲介営業での交渉力や財務知識が活きやすい

金融機関にとって、企業オーナーとの関係構築に長けたM&A仲介営業経験者は非常に魅力的です。既存の金融商品営業とは異なる視点でクライアントの課題を解決できるため、転職後は“即戦力”として期待されるケースが多いです。
(2) 経営企画

経営企画は、企業の中長期戦略や新規事業の立案、全社的な経営管理を担う職種であり、M&A仲介営業の経験を活かしやすいフィールドです。
- M&Aや企業再編を推進する実務経験
経営企画部門がM&Aをリードする企業も多く、仲介会社での経験が役立つ - データ分析や施策立案
M&A仲介営業で培ったリサーチ力・マーケット理解が武器になる - 他部署との連携
オーナー経営者や関係部門との調整力を発揮できる

M&A仲介営業で養った“俯瞰的な経営視点”は、経営企画においても非常に重宝されます。会社全体の戦略を考える立場として、財務・会計知識や交渉スキルをフルに活かせるでしょう。
(3) コンサルティングファーム

コンサルティングファームへの転職も、M&A仲介営業のキャリアパスとして人気があります。コンサルの現場では、クライアント企業が抱える幅広い経営課題に対して、M&Aを含めた最適解を提案します。
- 戦略策定やPMI(買収後の統合業務)など、M&Aプロセス全体を支援
- 中小企業のオーナーに対する事業承継や後継者育成のアドバイス
- 職務の幅が広い
M&A仲介営業だと「買い手と売り手のマッチングと調整」が中心だが、コンサルではクライアントの経営改善や組織改革などがメイン

「M&A仲介営業だけだと提示できる手法が限られている」と感じる方が、より多角的な課題解決に取り組めるコンサル業界へ移る例が見られます。船井総研や山田コンサルなど日系ファームをはじめ、外資系ファームでもM&A経験者を募集するケースが増えています。
(4) FAS(フィナンシャル・アドバイザリー・サービス)

FASとは、企業の財務面にフォーカスしたアドバイザリー業務全般を指し、M&Aのデューデリジェンスやバリュエーション、企業再生支援など専門性の高いサービスを提供します。
- Big4系(KPMG FAS、PwCアドバイザリー、EYストラテジーアンドトランザクション、デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー)
- 独立系FAS(英語力が必須でない場合も多い)
- 買い手・売り手両者のニーズ理解や交渉スキル
- 案件進行の段取り管理やプロジェクト推進力
大型・クロスボーダー案件を扱うこともあり、財務分析や国際税務の知識が深く求められる

FASはM&Aの“ハイエンド”な領域に携われるため、高度な専門性を志向する方に人気のキャリアパスです。英語力や会計・税務の深い知見を身につけることで、さらに市場価値が高まります。
(5) PEファンド

PEファンド(プライベート・エクイティ・ファンド)は、未上場企業に投資し、経営支援を通じて企業価値を高め、最終的な売却やIPOで利益を得るビジネスモデルです。
- 営業力・人脈が活きる
投資家からの資金調達や企業とのリレーション構築で、M&A仲介営業の経験が評価される - 求人数は少なめ
ポジションの枠自体が限られることが多い / ファンドとの繋がりや紹介で転職が決まるケースが多い - 業務内容
投資先企業の経営支援・モニタリング / エグジット(売却/IPO)戦略の策定・実行

PEファンドへの転職は、M&A仲介営業時代にファンドと良好な関係を築いていた場合に実現するケースがよくあります。投資業務だけでなく、営業面や企業運営面にも貢献できる人材が求められるため、総合力が試される分やりがいも大きいです。
3. 自身の志向に合ったキャリアを選ぶコツ
以上のように、M&A仲介営業で身につく営業力・交渉力・財務知識・経営視点は、多様なフィールドで高く評価されます。大切なのは、自分が「何をしたいか」「どの専門性を深めたいか」を明確にしておくことです。
- 経営視点をさらに広げたい → 経営企画やコンサルファーム
- より専門的な財務・法務スキルを磨きたい → FAS、投資銀行など
- 投資のダイナミックさを体感したい → PEファンド
- 営業力を活かしつつ金融業界で活躍 → 銀行・証券会社のM&A部門

いずれのキャリアでも、M&A仲介営業の経験は大きな強みになります。しかし、それぞれに必要とされる専門性や英語力が違うため、転職先のニーズやカルチャーを事前にしっかりリサーチすることが成功への近道です。
M&A業界転職を成功させるポイント
1. 未経験からでもチャンスはある
金融機関出身者やコンサルファーム出身者など、専門性を備えた人材はもちろん、以下のような経歴を持つ方も高評価です。
- 法人営業(BtoB営業)経験者
新規開拓や経営者との商談経験を転用可能 - 商社での事業投資やプロジェクト管理経験
交渉力と異文化理解力がM&A案件でも活きる - 事業会社での経営企画・事業開発
自社でのM&A経験があれば経験者としてみられることも - 一般的な法人営業からのキャリアアップ志向
高収入イメージへの憧れや成長意欲が強い方

M&A業界は人手不足もあり、未経験採用にも積極的です。重要なのは学習意欲と粘り強さ、そして経営者とのコミュニケーションを恐れないマインドです。
2. 専門知識の習得方法
簿記2級レベルを目標に独学やスクールを活用
事業承継士、M&Aコンサルタント育成講座など
M&Aニュースや業界紙(たとえば「MARR」など)を定期的にチェックし、大型M&A事例や国内外の動向をキャッチアップする。
自身の“売り”を明確に説明する練習をする。

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3. 転職活動の進め方
「なぜM&Aに興味があるのか」をロジカルに説明できるように
M&A仲介会社、投資銀行、コンサル、事業会社のM&A部門など選択肢は多岐にわたる
非公開求人や書類添削、面接対策で効率的に活動。エムアンドエージョブボード(MAJB)をはじめ、M&A業界に強いエージェントの活用がおすすめ。
一度の不採用で終わりではなく、半年・1年スパンで再挑戦も視野に。
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1.M&A JOB BOARD(エムアンドジョブボード)の強み
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まとめ
M&A営業は、企業の未来を動かすダイナミックな仕事でありながら、高収入やキャリアアップの可能性が大きい点でも魅力的です。一方で、専門知識や交渉スキルの習得、長期的に案件を管理する粘り強さなどが求められ、決して楽な職種ではありません。
しかし、未経験からでも法人営業や金融関連の経験を強みに転身を目指せるチャンスがあります。
- 今の仕事に閉塞感を覚えている
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