M&A業界は高い年収や企業成長への貢献など、大きな魅力が詰まった分野です。しかし一方で、採用ハードルが高いことでも知られています。なかでも「面接対策」は成功・不成功を左右する極めて重要なステップです。実際どんなことを聞かれ、どこまで準備すべきか悩む方は少なくありません。
そこで本記事では、面接官がよく聞く質問8選を中心に、回答のポイントやNG事例、そしてM&A業界に特化した転職支援サービスによる面接攻略の秘訣を、プロの視点でわかりやすく解説します。
転職エージェント兼マネージャー
M&A JOB BOARD 稲田 成秀
いなだ なるひで
早稲田大学法学部卒業後、不動産業界を経て、医療系のキャリア支援に従事。株式会社WILLCOでは、主力事業の責任者として事業拡大を牽引。最優秀エージェント賞を複数回受賞し、役員採用や事業承継仲介に携わる。現在はM&Aキャリア開発事業部の事業責任者を務め、豊富な知見に基づくのキャリア支援・採用支援を通し、業界全体の“働きがい実現”に尽力している。
1. M&A業界面接の特徴
1-1. M&A業界が求める人物像
M&A（Mergers & Acquisitions）業界は、企業同士の合併や買収を仲介・アドバイスすることで、大きな経済価値と社会貢献を生み出す仕事です。特に中堅・中小企業の事業承継が注目される昨今、多くのM&A仲介会社・金融機関・事業会社がアドバイザー人材を求めています。
- 「コミュニケーション力」と「粘り強さ」
面接では、初対面の経営者と対等に話せるだけの胆力や折衝力があるかどうかが厳しくチェックされます。 - 「財務・会計知識」と「論理思考力」
M&Aには財務分析・企業価値評価など専門知識が欠かせません。未経験の場合でも、面接官から見て“地頭の良さ”が感じられるかがポイントです。 - 「仕事への覚悟」
ときに月100時間を超える残業やタイトなスケジュール管理を要する案件もあります。激務に耐えうる覚悟と体力・精神力も問われるでしょう。
M&A業界では“クライアントの人生を左右する責任感”が求められるため、単なる営業スキルだけでなく、人間性や誠実さも重視されると感じます。
1-2. 面接で重視されるポイント
- “なぜM&Aなのか”の動機の強さ
高年収だけが志望動機だと面接官に即見抜かれがちです。バックグラウンドや人生経験、社会貢献への想いなど「自分ならではのストーリー」を語れると強い印象を残せます。 - 受け答えのテンポやロジカルさ
M&A仲介の現場は経営者へのヒアリングや折衝が日常業務です。そのため、面接でも「会話のキャッチボールがスムーズか」を厳しくチェックされます。 - 即戦力になりうる経験・スキル
営業経験、コンサル経験、金融知識などがあればポジティブに評価されます。また未経験でも、その分野の“深掘り”をどれだけ行っているかを問われる場面が多いです。
1-3. 採用市場動向と合格のカギ
- 競争は激化
M&A業界は近年人気が急上昇しており、募集枠に対する応募者数も増加傾向。一次面接の通過率が以前よりも下がっているという声もあります。 - 未経験OK求人も増加中
地方銀行出身者や法人営業出身者を中心に、異業種からの採用枠を広げる動きもあり、門戸は広がりつつあります。ただし“本気度”と“やり抜く力”を面接で見極めるため、評価基準は変わっていないとお考え下さい。 - 合格のカギは事前準備
志望動機や自己PRに加え、企業研究や業界ニュースの把握、財務・会計の基礎理解などが必須。短期決戦でも説得力ある回答を準備して臨むことが重要です。
実際に採用担当者と話すと「業界理解の浅い人が多く、熱意や意欲が見えないと一瞬で不合格にする」との声を何度も耳にします。
2.M&A業界でよく聞かれる面接質問８選
ここからは、実際の面接でよく聞かれる質問と、その背後にある意図、回答のポイントを具体的に紹介します。ぜひ「M&A面接の質問」として対策を立てる際の参考にしてください。
2-1. 志望動機を聞く質問
典型的な質問例
「なぜM&A業界を志望しましたか？」
「なぜ当社を選んだのですか？」
- M&Aという仕事への理解度・熱意を確認
- その会社でなければならない理由を確かめる
- 具体的なエピソードを交える
例：「祖父の会社が後継者不在で悩んでいる姿を見て、事業承継の課題を解決したいと思った」など。 - 企業研究を踏まえる
例：「○○業界の成約実績が豊富で、私の前職での知見を活かせると考えています。」 - 抽象的にならない
「高年収だから」「カッコいいから」だけではNG。具体的な数字や事例を挙げると説得力が増します。
面接官は志望動機に“自分ごと感”があるかを非常に重視します。「自分ならではの目線」でM&A業界へ惹かれた理由を語りましょう。
2-2. 経歴・実績を問う質問
典型的な質問例
「今までの職務内容と、どのような成果を上げましたか？」
- 過去の実績やスキルがM&A業務に活きるかどうかを見極める
- 営業成績やコンサル経験等があれば定量的に確認する
- 再現性のある方法でPDCAを回していたか確認する
- 成果を数字で示す
「支店トップの売上を達成した」「前年比150%アップ」など。 - その成果を出したプロセスを語る
例：「顧客訪問リストを細分化しPDCAを回したところ、成約率が向上」など。 - M&Aに応用可能な強みをしっかりアピール
財務分析力、提案力、コミュニケーション力などを結びつける。
2-3. 困難・挫折経験に関する質問
典型的な質問例
「これまでで最も大変だった仕事と、それをどのように乗り越えましたか？」
- ストレス耐性や問題解決力、行動力を確認
- M&A現場の困難にも粘り強く対応できるか
- 具体的なストーリーを用いる
「新人時代に大規模プロジェクトを任され、〇〇の壁に直面したが、□□の施策で解決」など。 - 自分の工夫や主体性を強調する
上司やチームからの助言も踏まえつつ、自ら動いて克服した点にフォーカス。 - 学び・成長を必ず加える
「この経験を通じて、○○力を獲得。M&Aでも活かせると考えています。」
2-4. 将来のキャリアプランを問う質問
典型的な質問例
「これまでで最も大変だった仕事と、それをどのように乗り越えましたか？」
「5年後、10年後のキャリア目標を教えてください。」
- 長期的に働く意欲・ビジョンの有無
- 会社の方向性と求職者のキャリアプランが一致するか
- 短期・中期の目標をセットで
例：「まずは3年で10件の成約を達成し、その後マネージャーとして後輩を育成したい。」 - M&A業界で実現したいことを明確に
事業承継支援、地域活性化、大型案件を担いたい…など具体的に。 - 大きな夢も大事だが、現実性もアピール
「世界の投資銀行で活躍する」など漠然としすぎるより、自社でどんな成長をしたいかを語ると好印象。
2-5. 他社の選考状況や併願についての質問
典型的な質問例
「これまでで最も大変だった仕事と、それをどのように乗り越えましたか？」
「他にもM&A仲介会社を受けていますか？」
- 転職活動の状況を把握したい
- 志望度や一貫性の確認（M&A業界一本か、他業界も含むのか）
- 正直に答える
例：「同業他社を2社受けており、いずれも一次面接段階です。」 - ただし、第一志望度を示す
「御社が第一志望です。ただ、他に2社ほど並行して検討しています。」 - 矛盾しない軸を持つ
大きく異なる業界も受けている場合は「なぜ受けているのか」理由を明確に。
2-6. その他の頻出定番質問
- 「転職理由」「転職の軸」
転職理由がネガティブになりすぎないよう、また今の職場で実現できない事柄（例：新たな成長の機会を求めて）などポジティブにまとめましょう。 - 「自分の長所・短所」
短所を述べる際は「克服に向けて取り組んでいる姿勢」を必ず示す。 - 「学生時代に頑張ったこと」（若年層の方の場合）
何を目的に、どのような努力をしたか、エピソードを具体的に語ると良いでしょう。
2-7. NG回答例とその改善ポイント
NG回答例：
M&A業界は年収が高いと聞いたので応募しました。詳しいことはまだ勉強中です…。」
「高い年収だけでなく、事業承継や企業価値向上に興味を持ったのが大きいです。実際に〇〇の書籍やニュースを読み、具体的な業務イメージを掴んできました。」
NG回答例：
「特に苦労した経験は思い当たらないですね…。」
「前職で〇〇の問題に直面し、△△の施策で解決した経験があります。そのプロセスで培った□□力を御社でも活かせると考えています。」
2-8. M&Aの面接でよくある疑問点
Q1. 「M&Aの専門用語を覚えるべきですか？」
A. 全てを完璧に覚える必要はありませんが、ソーシング、バリュエーションやデューデリジェンス、IM、LOIといった基本的用語は理解しておきましょう。
Q2. 「事業承継のニュースなど、最新情報をどうチェックすれば？」
A. 日本経済新聞やM&A関連のニュースサイト、M&A総合情報メディア（例：マールオンラインなど）のチェックがおすすめです。大きな案件が発表されたら、業界サイトの記事を読むだけでなく、自分なりに分析してみると面接で話すネタになります。
Q3. 「英語力は必要ですか？」
A. 国内中小企業の事業承継や仲介を手掛ける会社では英語スキルは必須ではないです。ただしグローバル案件を扱う大手投資銀行やコンサルの場合、英語力があった方が転職幅が広がります。
英語以上に大事なのは“経営者との対話力”です。面接でもそこを見られます。
3.面接を突破する具体的対策
3-1. 自己分析とストーリー作り
面接官は“ストーリーの一貫性”を重視します。以下の3ステップで整理しましょう。
- どんな経験を積んできたか
- 強み・弱みは何か
- なぜ転職を決意したのか
- M&A業界に惹かれた理由は何か
- 入社後にどんなことを実現したいか
- 5年後、10年後のビジョン
すべてを一貫した物語にまとめると、深掘りされてもブレない回答ができます。
3-2. 企業研究・業界研究の徹底
企業研究では、会社のHP・プレスリリース・IR情報を詳しくチェックします。
- 過去の成約事例や得意分野
- 社風や理念、経営トップのメッセージ
- 競合他社と比べた強み・弱み
業界研究としては、M&A関連ニュースを日経や業界メディアでウォッチ、専門書やセミナー動画などで知識をインプットしましょう。
3-3. 模擬面接・想定問答の作り方
志望動機、経歴、失敗談、成功談、キャリアプラン…
頭の中だけで考えるのではなく、実際に口頭で練習
転職エージェントや信頼できる同僚に模擬面接を依頼する
矛盾や弱みを指摘してもらい、どんどん修正する
本番さながらの練習を通じて「あれ、ここ論理が飛んでる？」と気づくことがよくあります。想定問答の作り込みと修正が合否を大きく左右します。
4.M&A業界のキャリアパスと年収イメージ
4-1. キャリアパスフローと必要スキルマップ
以下は一般的なM&Aアドバイザーのキャリアパス例です。
法人営業経験などを活かしてアシスタント的役割からスタート
小型案件のメイン担当としてバリュエーションや交渉を学ぶ
中～大規模案件の責任者としてチームを統率
複数チームのマネジメント、会社の経営戦略にも関与
- コミュニケーション力
- 財務分析・会計知識
- 法務・税務の基礎理解
- 交渉力・提案力
- プロジェクト管理スキル
すべてを最初から完璧にそろえている人は少ないです。むしろ入社後の研修や実案件を通じて身につけられるマインドがあるかどうかが重要でしょう。
4-2. 年収データと他社比較表
- 若手～中堅：500万円～900万円（基本給＋インセンティブ）
- シニア～マネージャークラス：1000万円～3000万円（実力次第で青天井の場合も）
他社比較表（一例）
| 会社名 | 強み | 平均年収帯 | 働き方 |
|---|---|---|---|
| A社（大手仲介） | 中堅～大企業の案件が豊富、知名度 | 700万～2000万以上可 | 大手ならではの研修体制、激務傾向 |
| B社（外資系IB） | グローバル案件の実績豊富 | 1000万～上限なし | 国際案件も多く英語必須、超激務 |
| C社（中堅仲介） | 地域密着で中小企業M&Aに強い | 500万～1200万 | タイトなノルマだが経験が積める |
| D社（ベンチャー） | 新興企業ならではのスピード感 | 600万～1500万前後 | 裁量大、仕組みづくりから関われる |
M&A業界は成果報酬が大きい会社も多いため、一概に「平均年収」とは言いづらいですが、あくまで目安です。自分に合った企業規模・案件規模を見極めることが大切ですね。
4-3. 応募資格と採用企業のチェックポイント
- 学歴（大卒以上が目安）
- 営業経験（無形商材やオーナー営業が有利）
- 簿記2級や税理士資格があれば優遇（会社による）
- 法人営業・金融・コンサルなどの経験があると尚良い
- 覚悟やモチベーション
- 業界や企業の理解度
- 個人の“再現性”ある実績（過去に数字を作った実力など）
資格がなくても合格した例は多数あります。数字を追う姿勢や論理思考、コミュニケーション力の方が重視されることも珍しくありません。
5.MAJBならではの転職支援と成功事例
5-1. マンツーマンの面接対策・専門エージェントのサポート
M&Aに特化した転職支援サービス「エムアンドエーJOBボード（MAJB）」では、
- 非公開求人の紹介
- 専任エージェントによるマンツーマン面接対策
- 年収交渉や書類添削、キャリア相談
など、手厚いサポートを提供しています。
業界を知り尽くしたキャリアアドバイザーがつくため、「どんなふうに志望動機を組み立てるべきか」「面接官が重視するポイントはどこか」など極め細かなアドバイスがもらえます。
5-2. 実際の内定実績事例
事例1：地方銀行出身・30代前半 Aさん
MAJBのサポート：財務知識の補強におすすめの書籍・セミナーを紹介 / 面接想定問答を3回実施し、回答をブラッシュアップ
【結果】大手M&A仲介企業に見事内定。年収は前職比約1.5倍になりました。
事例2：IT企業出身・20代後半 Bさん
MAJBのサポート：業界理解を深めるための勉強会を紹介 / M&A実務で求められる“粘り強いフォロー力”を自身のIT営業のエピソードで演出
【結果】ベンチャー系仲介会社に内定。将来的には地方再生の案件に携わる目標を実現中
実際にMAJBのエージェントが多くの内定実績を築いているため、最新の採用事情や面接官の“生の声”を踏まえた指導が受けられる点が大きなメリットです。
5-3. MAJBで転職活動を始める方法
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6.まとめ
M&A業界の面接は厳しく深堀りされるからこそ、事前準備が成功を左右します。「なぜM&Aなのか」「なぜその会社なのか」という質問に一貫性のあるストーリーを持って答えられるかどうかが勝負所です。
- 徹底した自己分析と企業研究
自分の経験・実績をどのようにM&A業務に活かすかを具体的に語りましょう。 - コミュニケーション力・説得力をアピール
面接官との会話のテンポや論理的な受け答えが求められます。 - M&A専門エージェントをうまく活用する
書類添削から模擬面接、企業との調整まで幅広くサポートを得ることで、合格率は飛躍的に高まります。
M&A業界は今後も需要拡大が見込まれ、やりがいのある案件が豊富です。「高い年収を得ながら経営者の想いをサポートできる」という魅力に惹かれる方は、ぜひ一歩踏み出してみてください。
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