近年、中小企業の事業承継や海外買収案件が増加し、M&A市場はますます拡大しています。こうした流れの中で、M&Aを支える仲介会社は多様化し、それをひと目で俯瞰できる「M&A業界カオスマップ」が注目を集めています。
しかし、「M&A会社はどこも同じに見える…」「年収やキャリアパスはどう違うの?」と疑問を抱える方も多いのではないでしょうか。本記事では主要仲介・コンサル各社の特徴や強み・弱みを整理し、転職市場の動向や未経験からの参入方法も解説します。高収入や専門性を身につけたい方に向けて、M&A業界の実態を余すところなくお伝えします。

転職エージェント兼マネージャー
M&A JOB BOARD 増田 将汰
ますだ しょうた
明治大学卒業後、明治安田生命に入社。個人・法人営業を担当し、上位5%の成績を達成。その後、営業所長として約50名のマネジメント経験を積む。株式会社WILLCOでは「弁護士・法務領域」と「採用コンサルティング事業」をゼロから立ち上げ、現在はM&A JOB BOARDの事業責任者として、業界に特化した転職・就職サポートを行い、業界トップクラスの実績を実現。
第1章:2025年版M&A業界概況とカオスマップ
1-1. 国内M&A市場の最新動向
2024年の国内M&A件数は4,700件となり、17.1%増で2022年の4304件を上回り、最多記録をを更新しました。金額は19.6兆円で8.0%増、過去2番目の高水準を記録しました。
- 国内企業同士(IN-IN):3,702件(前年比20.5%増)
- 日本企業による海外買収(IN-OUT):665件(同0.6%増)
- 海外企業による対日投資(OUT-IN):333件(同17.7%増)
すべてのマーケットで増加した結果となっています。
参照元:2024年のM&A回顧(2024年1-12月の日本企業のM&A動向) : M&A回顧 : M&A情報データサイト | レコフデータ運営のマールオンライン
1-2. 中小企業の事業承継型M&Aが増加
一方で中小・零細企業の後継者不足に対処するためのM&Aが増えており、仲介プラットフォームを活用した「小規模案件」の成約も年々増加傾向にあります。
公的機関である事業承継・引継ぎ支援センター経由の成約数は2023年に2,000件を超え、2011年の0件から大きく伸長しました。今後も中小企業の事業承継ニーズが高まることが予想され、M&A仲介会社の裾野はさらに広がる見込みです。

こうした小規模事業M&Aは地域経済を守る上でとても重要。高齢化社会が進む日本では、全国各地で『後継者不在問題』が深刻化しており、M&Aが一つの解決策として浸透しつつあります。
日本の99.7%が中小企業。まさしく中小企業が日本を支えているといっても過言ではありません。
近年、日本では経営者の高齢化や少子化が進み、2025年には、127万社が後継者不足で廃業となる可能性があり、その約半数、60万社以上は黒字にもかかわらず、廃業を迫られる可能性に陥っています。
1-3. M&A業界カオスマップとは
業界プレイヤーの多様化に伴い、「どの仲介会社がどんな特徴を持つのか?」を俯瞰する必要性が高まっています。そこで近年注目されているのが「M&A業界カオスマップ」です。
大手仲介会社から、特定業種・地域に特化したブティックファーム、税理士法人系、PEファンドなど、幅広いプレイヤーを一目で整理できるのが利点です。

「M&A業界に初めて転職を考える方ほど、『どこも同じに見える』と迷ってしまうことが多いです。カオスマップを活用して、会社ごとの強み・得意領域の違いを見極めましょう。
第2章:主要M&A仲介プレイヤー比較

2-1. 大手M&A仲介会社の特徴

2-1-1. 日本M&AセンターHD

成約件数・実績 | 年間1,100件規模の成約を誇り、業界トップを独走 |
コンサルタント数 | 645名(2024年3月期) |
ネットワーク | 全国700以上の会計事務所・300以上の金融機関と提携 |
平均年収 | 1,200万円前後(若手でも1,000万円超の事例多数) |
強み | 組織力・豊富な支店網、ワンストップサービス |

M&A仲介の歴史を作ってきた業界のリーディングカンパニー。売上高、成約件数、コンサルタント数で他社を圧倒しています。

2-1-2. M&Aキャピタルパートナーズ

成約件数・実績 | 年間221件(2024年9月期) |
コンサルタント数 | 214名(2024年9月期) |
特徴 | 「直接提案型」で紹介手数料をカット、高い利益率を誇る |
平均年収 | 2,277万円(2024年9月期) ※在籍1年以上の平均が4,000万円を超えるとも |
強み | 大型案件に強く、オーナー経営者との交渉力が高い |

1人当たりの生産性は他社と比較し、圧倒的に高いのが特徴。個々の能力が高く、M&A仲介業界の調査で10冠達成、“最高ブランド“を確立しています。

2-1-3. ストライク

成約件数・実績 | 年間252件(2024年9月期) |
コンサルタント数 | 303名(2024年9月) |
強み | 公認会計士創業で会計士・税理士とのネットワークが強い |
平均年収 | 約1,609万円 |
特徴 | 製造業・IT業界などオーナー企業を幅広く扱う。組織は中堅規模で小回りが利く |

業界内でも堅実な企業カラーで、財務アドバイザリーの精度が高い印象。ガツガツ営業というより丁寧な対応で信頼を得ているとよく聞きます。

2-1-4. M&A総合研究所(M&A総研)

成約件数・実績 | 年間242件ほど、急成長で業界2位の売上規模に急伸 |
コンサルタント数 | 320名(2024年9月末) |
特徴 | AI/DXを徹底活用し、完全成功報酬制を採用 |
平均年収 | 3,200万円超(在籍2年以上のM&Aアドバイザー平均) |
強み | 業務効率化×高インセンティブで若手が活躍、残業30時間程度の実績 |

労働集約型のビジネスモデルからAI・DXの力をうまく活かし急成長を果たしました。平均成約期間は他社の半分程度と稼げる環境を実現。

2-2. 中堅・古参中堅会社

2-2-1. レコフ

1987年に創業した老舗M&A仲介会社で、業界トップクラス1000件以上の成約実績を持ちます。2016年にはM&Aキャピタルパートナーズと経営統合し、基盤をより強固なものとしています。

業界誌「MARR Online」を運営し、約2万社の顧客基盤を有するなど、データ提供に定評があります。
2-2-2. インテグループ

完全成功報酬型の料金体系で新規受諾数も右肩上がりで伸びています。M&A業界でトップクラスの実績を出してきた人材が多く集まり、専門性や実績という点でも強みを持ちます。

インテグループという社名は、Integrity(誠実さ)に由来した造語です。専門性とスピード、顧客志向を体現した中堅・中小企業のM&A支援で業績を伸ばしています。

2-2-3. 名南M&A株式会社

元々、税理士法人から始まり、2014年にM&A部門の立ち上げとともに分社化。
東海エリアの地域密着を売りにし、名南グループのアセット、地方銀行との提携を活かした案件が多い。東海地方ではNo.1の実績を誇ります。

税理士法人から始まり、独立した部門が上場まで果たした日本で初の企業です。排他的文化が強いと言われる東海地方で圧倒的な信頼と実績を得ています。

2-3. 特化型・新興ブティック

2-3-1. ブティックス

介護・福祉業界に特化した「M&A」「採用支援」「展示会」事業を行っています。特定業界のデータやネットワークに強みを発揮し、深い知識を持つコンサルタントが多い。ニッチながら高い専門性で差別化している。

ブティックが強みとしてる介護・福祉業界は今後、労働人口の減少と後継者不足が顕著な業界であり、M&Aの介在価値は非常に大きいと考えています。今後さらなる成長を秘めていると思います。

2-3-2. M&Aロイヤルアドバイザリー

M&Aの経験豊かな人材が多く参画し、急激に業績を伸ばしています。
会計士や税理士の資格者が在籍しており、専門性の高いフェーズでも一気通貫なサポートが可能です。

規模拡大を目指し、業界未経験の方を含めた採用を積極的に行っています。積極的な採用は経営が順調かつ成長性があることに裏返しですので、今後も成長が見込まれるかと思います。

2-3-3. ウィルゲート

IT/webに特化した新興ブティックとして、ウィルゲートはデジタル分野の知見を活かし、ITベンチャーやWeb関連案件に強みを発揮しています。

ウィルゲートは、元々IT業界に特化したコンサルティング支援を行っており、それゆえすでに多くのIT企業とのリレーションがあります。IT業界×成長戦略M&Aで右肩上がりで成長中です。
2-3. 税理士法人・会計事務所系
事業承継ニーズの高まりから、税理士法人や会計事務所が独自にM&Aアドバイザリー業務を展開するケースが増えています。既存クライアントの後継者問題を解決するため、売り手情報をマッチングする立場として機能します。
ただし買い手開拓や交渉は大手仲介会社と組む場合も多く、「税理士法人単独で完結」はまだ少なく、仲介会社やFASと連携し、完結させることも多いです。
名南M&A株式会社のように名南税理士法人から独立したパターンもあります。

税理士や会計士はクライアントの財務状況をよく把握しているため、M&Aの入り口を押さえやすい。ただし交渉面や営業力が必要になる場面では外部アドバイザーに任せることも。
第3章:主要仲介会社を図表で比較
3-1. 4象限マトリックス表で比較

上記のマトリクス図はあくまで「認知度(縦軸)×規模(横軸)」とし、大手総合型から小規模特化型までの配置を解説いたします。
- 横軸:右ほど会社規模(売上・社員数・成約件数)が大きい
- 縦軸:上ほど認知度が高い
- 日本M&AセンターHD
- M&A総合研究所(M&A総研)
- ストライク
- M&Aキャピタルパートナーズ
- 全国拠点を持ち、あらゆる業界・規模に対応する総合型。成約件数・売上規模ともにトップクラス)
- レコフ(大型・クロスボーダー)
- インテグループ(中堅~大企業中心)
- 山田コンサルティンググループ(事業再生・コンサル軸)
- 名南M&A株式会社
- 大企業再編や特定業界に強みを持つネットワークを活かすタイプ
- 株式会社HCフィナンシャル・アドバイザー(建設・IT)
- ブティックス(介護・医療)
- M&Aロイヤルアドバイザリー(新興ブティック)
- 特化型の少数精鋭ブティックが多く、ニッチ市場で強みを発揮
- ウィルゲート【IT/web特化】
- Sourcing Brothers(小規模ながら新興スタートアップ買収に強み)
- 自社クライアントを軸に小~中規模M&Aを支援するケースが多い
以下、ランキングは最新の公表データに基づき、M&A JOB MAGAZINE編集部で独自に作成。
3-2. M&A仲介業界の売上高ランキング
最新の公表データに基づく、売上高ランキング(上位5社)は以下の通りです。
- 日本M&Aセンター/441億円
- M&Aキャピタルパートナーズ/192億円
- ストライク/181億円
- M&A総合研究所/165億円
- fundbook/58億円
3-3. M&A仲介会社の成約件数ランキング
※2024年頃の主な公表データを参照
- 日本M&Aセンター/1,146件
- ストライク/252件
- M&A総合研究所/242件
- M&Aキャピタルパートナーズ/221件
3-4. 平均年収ランキング
※全社員、2年以上在籍アドバイザーの平均年収から算出
- M&A総合研究所/2,815万円
- M&Aキャピタルパートナーズ/2,277万円
- 株式会社HCフィナンシャル・アドバイザー/1,447万円
- ストライク/1,609万円
- 日本M&Aセンター/1,243万円
3-5. 拠点数ランキング
- 日本M&Aセンター:全国7拠点 + 海外5拠点展開
- ストライク:全国9拠点
- HCフィナンシャル・アドバイザー:全国5拠点+台湾に1拠点
- M&A総合研究所:国内7拠点と海外1拠点
- M&Aキャピタルパートナーズ:東京に1拠点
3-6. 各社のSWOT分析
企業名 | Strength(強み) | Weakness(弱み) | Opportunity(機会) | Threat(脅威) |
---|---|---|---|---|
![]() | 圧倒的な成約件数・全国ネットワーク豊富な実績 | 組織拡大による動きの遅さ不祥事報道による信用リスク | 地方案件・アジア進出の需要増 | 新興勢力の台頭手数料の透明化による価格競争 |
![]() | 直接提案型で高収益大型案件に強い交渉力 | 地方・小規模案件が少ない組織規模の拡大余地に限り | 大企業の事業再編案件クロスボーダー大型ディール | ライバル企業のインセンティブ競争人材確保の難航 |
![]() | 会計士ベースの安定成長幅広い業種への対応 | 突出した強みがやや弱い | 中堅オーナー企業のM&A増地方拠点拡充 | 他社のDX化や大手資本による猛追 |
![]() | 急成長・高収益効率化×高インセンティブで人材採用力が強い | 組織が若く人材育成・案件品質管理が課題 | AI・DX活用によるさらなる拡大買い手企業との連携強化 | 案件急増に伴う未成約リスク顧客満足度低下への懸念 |
第4章:M&A業界転職市場の最新動向
4-1. 人材不足と「売り手市場」
M&A件数が増加し続ける一方で、M&Aアドバイザーの頭数が追いつかない状況が続いています。そのため、「未経験OK」「ポテンシャル採用枠あり」といった求人が増えており、銀行・証券出身者だけでなく、コンサルや一般法人営業からの転職も歓迎されやすくなっています。

特に20代後半~30代前半で営業実績を持つ方は、M&A業界で需要が高いです。『金融知識は後から学べばいい』というスタンスの企業も増え、採用門戸が開いています。
4-2. 高インセンティブの魅力
M&A仲介の平均年収は1,000万円超が当たり前という状況。大手上場仲介会社の平均年収ランキングでも常にトップクラスで、M&Aキャピタルパートナーズ、M&A総研などは2,000万~3,000万円という破格の数字を公表しています。
- 基本給は控えめでも、成約ごとの歩合が非常に高いため、成功すれば青天井で稼げるのが特長です。

「元々『激務高給』で知られる業界ですが、最近は効率化が進み残業が減る企業も出てきました。ただし本質的には労働集約型のビジネスモデル、成果主義の世界なので、安定志向の方にはハードルが高いかもしれません。」
4-3. 働き方の変化:激務から効率化へ?
オンライン商談や社内DXの活用により、仲介会社の業務効率化が進んでいます。M&A総合研究所のように「平均残業30時間」「土日休みを取得できるケースもある」企業が注目され、激務イメージの改善が始まっています。
ただしクロージング前の詰め作業などは依然としてタイトになりがちなので、メリハリある働き方が求められるのは変わりません。

「『土日完全休み・残業ゼロ』とまではいかなくても、以前に比べると自分の裁量でスケジュールを組める会社が増えたのは事実。会社選びで大きく変わるので、転職エージェントに相談しながら比較するといいでしょう。」
第5章:未経験からM&A業界で成功するためのポイント
5-1. 求められるスキルと資質
- 営業力・交渉力
経営者への提案営業、トップ面談の調整、条件交渉の場面が多い - 財務・会計知識
BS・PL・CFなど基本的な財務諸表分析ができると強みになる - コミュニケーション能力
社内外の専門家を束ねる調整力・折衝力 - タフネスと粘り強さ
案件完了まで半年~1年かかることも珍しくない

「数字への強さももちろん大切ですが、最終的には『人間力』で経営者に信頼されるかが鍵です。特に中小企業のオーナーは『この人に任せて大丈夫か』を非常に重視するため、人柄や熱意がものを言います。」

5-2. 未経験者が活躍するステップ
転職前に、営業成績トップや大きなプロジェクト達成など、わかりやすい成果を作る
書籍やオンライン講座で用語・プロセスを学ぶ。簿記2級程度あれば尚可
自身の強みを業界用語に翻訳し、面接対策を実施
先輩の案件に同行し、実務を通じてプロセスや交渉術を学ぶ

学習意欲を示しておくと、面接官からの評価が高まります。資格が必須ではありませんが、簿記や証券外務員の勉強をしておくと、『勉強する姿勢がある』と見られます。
5-3. 転職でよくあるQ&A
Q. 激務すぎて体力がもたない?
- 確かに繁忙期はタフですが、会社によって裁量度合いが違います。効率化を進める企業も増加中。
Q. ノルマはある?
- ほとんどの会社で「数値目標」はあるが、“ノルマなし”と公言している企業もあり。未達の際のサポート体制を確認すると良い。
Q. 30代で未経験でも入れる?
- 関連業種(金融、コンサル、商社)出身なら可能性大。全くの異業種なら厳しいが、強烈な営業実績や独自アピールがあればチャンスあり。

6章:まとめ
2025年版の国内M&A業界地図レポートをベースに主要プレイヤーの比較から転職市場まで解説してきました。
M&A業界は高い収益性と拡大が続く市場ニーズによって、いまだ「売り手市場」が続いています。一方で、大手仲介会社と新興DX企業との競合は激化し、年収・働きやすさ・会社規模など、それぞれ特徴が際立ってきました。20代後半~30代前半のビジネスパーソンにとっては、「今のキャリアのままでいいのか?」「もっと専門性と高収入を得たい」と感じるタイミングで、M&A業界へのチャレンジを検討する方が増えています。
「情報が多すぎて混乱するかもしれませんが、まずはカオスマップを俯瞰し、自分に合いそうな会社の特徴を掴むところから始めてみてください。
これらの情報が、皆さまのキャリア選択の一助となれば幸いです。
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