2024年、日本のM&A市場は取引総額で過去数年ぶりの高水準を記録しました。公表案件数・完了案件数ともに前年を下回ったものの、1,000億円を超える大型案件が相次ぎ、市場の注目度は依然として高い状況です。
本記事では、LSEG(ロンドン証券取引所グループ)が発表した「日本M&Aレビュー 2024年」のデータをもとに、案件数ベースを中心としたアドバイザーランキングを紹介します。さらに、取引価額(ランクバリュー)ベースの上位ランキングも取り上げ、数字とランキングの両面から市場動向を整理します。

転職エージェント兼マネージャー
M&A JOB BOARD 増田 将汰
ますだ しょうた
明治大学卒業後、明治安田生命に入社。個人・法人営業を担当し、上位5%の成績を達成。その後、営業所長として約50名のマネジメント経験を積む。株式会社WILLCOでは「弁護士・法務領域」と「採用コンサルティング事業」をゼロから立ち上げ、現在はM&A JOB BOARDの事業責任者として、業界に特化した転職・就職サポートを行い、業界トップクラスの実績を実現。
日本M&A市場 2024年総括
2024年(1〜12月)の日本企業が関与するM&A公表案件は総額32兆6,103億円と前年比40.3%増、金額ベースでは6年ぶりの高水準となりました。1,000億円超の大型案件は前年より11件多い57件となり、日本M&A総額の72.8%を占めています。案件数は前年から増加したものの、IN-OUT案件はやや減少しました。
業種別では小売業が総額9,261億円で首位、市場シェアは30.4%。次いでハイテク(9,122億円、シェア15.1%)、工業(4,073億円、シェア14.4%)。一方、プライベート・エクイティ支援M&Aは前年比35.9%減の3兆1,180億円と、2021年以来3年連続で減少しました。
注目案件では、当初発表時点で大きな注目を集めたセブン&アイHDによるアリマジション・クシュタール買収(約8.4兆円)や、AZ-COM丸和HD&C&Fによるシンガポール・ホールディングス取得(823億円)などが挙げられます。
なお、セブン&アイによるアリマジション・クシュタール買収については、その後の協議の結果、2025年7月に撤回が正式に発表されており、最終的には成立に至っていません。
アリマンタシォン・クシュタール社のプレスリリースに関する当社の見解について | 企業 | セブン&アイ・ホールディングス
公表案件ランキング(案件数ベース)
ここからは、2024年にLSEG(ロンドン証券取引所グループ)が発表されたM&A公表案件をアドバイザー別に集計したランキングを基に解説していきます。
契約や取引発表ベースでの実績を示しており、市場動向のトレンド把握に有効です。
集計期間:2024年1月〜12月
順位 | アドバイザー名 | 案件数 | 市場占有率(%) | 前年比(%) | ランクバリュー (億円) |
---|---|---|---|---|---|
🥇 | M&Aキャピタルパートナーズ | 171 | 4.3 | 2.3 | 371 |
🥈 | みずほフィナンシャルグループ | 153 | 3.9 | 1.6 | 32,691 |
🥉 | 三井住友フィナンシャルグループ | 122 | 3.1 | 0.7 | 38,532 |
4 | KPMG | 121 | 3.1 | 1.0 | 12,022 |
5 | 野村 | 116 | 2.9 | 0.9 | 145,862 |
6 | デロイト | 114 | 2.9 | 0.9 | 15,923 |
7 | ブルータスグループ | 91 | 2.3 | 1.3 | 17,490 |
8 | 大和証券グループ本社 | 79 | 2.0 | 0.8 | 36,421 |
9 | 三菱UFJモルガン・スタンレー | 78 | 2.0 | 0.8 | 172,444 |
10 | プライスウォーターハウスクーパース | 73 | 1.9 | 0.5 | 6,982 |
11 | 山田コンサルティンググループ | 57 | 1.5 | 0.2 | 5,686 |
12 | マクサス・コーポレートアドバイザリー | 37 | 0.9 | 0.3 | 401 |
13 | 東京フィナンシャル・アドバイザーズ | 32 | 0.8 | 0.4 | 181 |
14 | AGSグループ | 31 | 0.8 | 0.4 | 611 |
15 | BofAセキュリティーズ | 25 | 0.6 | -0.1 | 24,060 |
15 | アーンスト・アンド・ヤング | 25 | 0.6 | -0.1 | 8,145 |
15 | フーリハン・ローキー | 25 | 0.6 | -0.2 | 14,258 |
18 | あおぞら銀行 | 22 | 0.6 | 0.0 | 58 |
18 | ゴールドマン・サックス | 22 | 0.6 | 0.0 | 117,028 |
20 | UBS | 18 | 0.5 | 0.0 | 16,145 |
- M&Aキャピタルパートナーズが2位以下を大きく引き離して首位。
- メガバンク系(みずほFG、三井住友FG、三菱UFJモルガン・スタンレー)が全てトップ10入りし、金融機関の存在感が際立つ。
- 会計系(KPMG、デロイト、PwC系)が複数ランクインしており、企業再編や事業承継案件での関与が幅広い。
- 15位以降には外資系や専門特化型(フーリハン・ローキー、あおぞら銀行など)も入り、多様なプレーヤーが混在。
完了案件ランキング(案件数ベース)
実際にクロージングまで至った案件数に基づくランキングです。成約実績を反映しており、アドバイザーの実行力を示す指標として重要です。
集計期間:2024年1月〜12月
順位 | アドバイザー名 | 案件数 | 市場占有率(%) | 前年比(%) | ランクバリュー (億円) |
---|---|---|---|---|---|
🥇 | M&Aキャピタルパートナーズ | 169 | 5.7 | 3.0 | 361 |
🥈 | みずほフィナンシャルグループ | 131 | 4.4 | 1.8 | 27,215 |
🥉 | KPMG | 101 | 3.4 | 1.6 | 12,901 |
4 | 三井住友フィナンシャルグループ | 99 | 3.3 | 0.8 | 25,601 |
5 | デロイト | 98 | 3.3 | 0.3 | 15,991 |
6 | 野村 | 90 | 3.0 | 0.1 | 59,189 |
7 | プライスウォーターハウスクーパース | 70 | 2.4 | 0.6 | 11,538 |
8 | ブルータスグループ | 68 | 2.3 | 1.2 | 14,105 |
9 | 大和証券グループ本社 | 66 | 2.2 | 0.9 | 28,037 |
10 | 三菱UFJモルガン・スタンレー | 62 | 2.1 | 0.9 | 70,391 |
11 | 山田コンサルティンググループ | 59 | 2.0 | 0.5 | 5,020 |
12 | AGSグループ | 36 | 1.2 | 0.6 | 827 |
12 | マクサス・コーポレートアドバイザリー | 36 | 1.2 | 0.6 | 181 |
14 | フーリハン・ローキー | 24 | 0.8 | -0.3 | 4,296 |
14 | 東京フィナンシャル・アドバイザーズ | 24 | 0.8 | 0.3 | 193 |
16 | アーンスト・アンド・ヤング | 22 | 0.7 | 0.1 | 8,953 |
16 | あおぞら銀行 | 22 | 0.7 | 0.1 | 58 |
18 | BofAセキュリティーズ | 20 | 0.7 | 0.0 | 21,971 |
18 | ゴールドマン・サックス | 20 | 0.7 | 0.2 | 26,779 |
20 | ROLEUP | 17 | 0.6 | 0.6 | 223 |
- 公表案件と同様にM&Aキャピタルパートナーズが首位を維持し、高い成約力を示した。
- 上位顔ぶれは公表時とほぼ同じだが、山田コンサルティンググループやAGSグループなど一部中堅勢が順位を上げている。
- 外資系(フーリハン・ローキー、アーンスト・アンド・ヤングなど)が中位にランクインし、クロスボーダー案件で存在感を発揮。
- 20位にはROLEUPが入り、ニッチ領域での確かな活動を見せている。
市場全体動向(案件数ベース)
案件数の推移を俯瞰すると、2024年は公表・完了ともに前年を下回りました。特に国内案件数は減少が続いており、企業の買収意欲や市場環境の変化が影響していると考えられます。
一方で、IN-OUT案件は増加傾向にあり、海外進出やクロスボーダー取引が活発化しています。
- 公表案件数合計:3,944件(前年比 -17%)
- 完了案件数合計:2,976件(前年比 -21%)
- 国内案件の減少が全体の数字を押し下げる一方、海外関連案件は堅調。
国内の市場動向理解には以下の記事もおすすめです。

ランクバリューベースのランキング(取引価額順)
案件規模の大きさに焦点を当てたランキングです。件数ベースのランキングとは異なり、少数でも高額案件を扱うアドバイザーが上位に入るのが特徴です。
公表案件では三菱UFJモルガン・スタンレーと野村が突出し、完了案件では三菱UFJモルガン・スタンレーが首位となりました。
公表案件(取引価額順)
順位 | アドバイザー名 | 取引価額 (億円) | 案件数 |
---|---|---|---|
🥇 | 三菱UFJモルガン・スタンレー | 172,444 | 78 |
🥈 | 野村 | 145,862 | 116 |
🥉 | ゴールドマン・サックス | 117,028 | 22 |
4 | JPモルガン | 48,402 | 15 |
5 | 三井住友フィナンシャルグループ | 38,532 | 122 |
完了案件(取引価額順)
順位 | アドバイザー名 | 取引価額 (億円) | 案件数 |
---|---|---|---|
🥇 | 三菱UFJモルガン・スタンレー | 70,391 | 62 |
🥈 | 野村 | 59,189 | 90 |
🥉 | JPモルガン | 46,295 | 16 |
4 | 大和証券グループ本社 | 28,037 | 66 |
5 | みずほフィナンシャルグループ | 27,215 | 131 |
- 公表案件では三菱UFJモルガン・スタンレーと野村が突出しており、金融機関系の強さが目立つ。
- 完了案件では三菱UFJモルガン・スタンレーが首位を維持し、安定した成約力を示した。
- 価額ランキングは件数ランキングと顔ぶれが似ているが、ゴールドマン・サックスのように大型案件特化で上位に入る事例もある。
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まとめ
本記事のまとめになります。2024年の日本M&A市場は案件数では減少傾向が見られる一方、取引額では大型案件の増加により高水準を記録しました。
国内外の経済環境や企業戦略の変化に伴い、今後はクロスボーダー案件や戦略的提携の増加が予想されます。
本記事のまとめ
- 2024年は総取引額が6年ぶりの高水準に達し、大型案件が市場を牽引。
- 案件数ベースではM&Aキャピタルパートナーズが公表・完了ともに首位を維持。
- 価額ベースでは監査法人系とメガバンク系が上位を占め、案件規模の集中が鮮明。
市場プレイヤーは、数字だけでなく市場構造や競合の動きを注視しながら戦略を立てる必要があります。
本記事がM&A業界の情報収集に役立てましたら幸いです。
本記事で取り上げたランキングおよび案件情報は、LSEG(ロンドン証券取引所グループ)が発表した「日本M&Aレビュー 2024年」のデータに基づいています。
記載の一部案件については、その後の協議状況により成立に至らなかった事例も含まれています。