M&Aコンサルタントは、NDA(秘密保持契約)やDD(デューデリジェンス)といった基本用語から、オリジネーション、ソーシング、エグゼキューションのような実務面で使われる言葉まで、非常に幅広い知識が求められます。未経験の方にとっては、これらの用語が具体的にどのような場面で使われ、なぜ重要なのかを把握しにくいと感じるかもしれません。
実際の面接現場では、これらの専門用語を「直接質問される」というよりも、面接官や現場のコンサルタントが会社説明や会話の中で自然に用いてくるケースが多く見られます。そのため、あらかじめ知識を身につけておけば、相手の説明をスムーズに理解でき、会話のキャッチボールがより円滑になるでしょう。
さらに、こうした用語をしっかり押さえておくことで、未経験者であっても「この人はしっかりキャッチアップできているな」と好印象を与えることができ、同じように選考を受けている他の候補者との差別化につながります。その結果、内定獲得の可能性を高める大きな武器となるはずです。
そこで本記事では、M&A JOB BOARDの転職エージェントが採用企業との面談を通じて得た独自調査をもとに、選考本番で理解度を問われやすい用語をわかりやすく整理しました。ぜひ最後までご覧いただき、M&A業界の選考に向けた対策を万全に整えてください。

転職エージェント
M&A JOB BOARD 小松﨑 資
こまつざき たすく
中央大学法学部を卒業後、株式会社コーセーに新卒入社。法人営業及び本部窓口営業に従事。販売戦略の策定やステークホルダーとの関係構築を得意とし、在籍約3年間で営業成績で上位4%に入る成果を上げる。当社へ転職後、士業求人サイト「LEGAL JOB BOARD」でトップセールスを記録したのち、M&A業界に特化した転職サービス「M&A JOB BOARD」の立ち上げにに従事。現在は、M&Aキャリア開発事業部のエージェントとして、潜在的なニーズを引き出すヒアリング力と「想像以上のキャリア提案」を武器に、担当会員様からの高い満足度を誇る。
1.選考でよく出るM&A業界の主要用語【基本フェーズ編】
はじめに、M&Aの一般的な流れの中で、選考時に頻出する代表的な用語を整理します。M&A業界の選考では「M&Aプロセスをどれほど理解しているか?」が評価ポイントとなるため、以下の用語は特に押さえておきたいところです。
1-1.NDA(秘密保持契約)

NDA(Non-Disclosure Agreement)は、M&A交渉の初期段階で締結される秘密保持契約です。買い手企業が譲渡企業の財務データや顧客リストなどを得る際、漏洩を防ぐための取り決めを明文化します。
NDAはM&Aだけでなく、多様な提携や共同開発の場面でも用いられます。守秘義務の範囲や基本的な契約書の読み方を把握しておくと良いでしょう。
1-2.IM(企業概要書・情報覚書)

IM(Information Memorandum)は、NDA締結後に買い手候補へ提供される企業概要書です。事業内容、財務状況、顧客層など詳しい情報が含まれます。
IMは譲渡企業の魅力をまとめた“プレゼン資料”と捉えると分かりやすいです。選考で「IMはどんな資料?」と問われたら、一言でまとめられると印象が良いでしょう。
1-3.DD(デューデリジェンス)

DD(Due Diligence)は、財務・税務・法務・ビジネス面などの多方面から買収候補企業を調査するプロセスです。リスクや問題点を洗い出し、買収条件を適正化する目的があります。
DDの重要性を理解しているかどうかはM&A知識の大きな指標になります。価格交渉との関連や、専門家との連携体制について言及できると好印象です。

1-4.LOI(基本合意書/Letter of Intent)

LOI(エルオーアイ)は、M&A交渉の初期段階で取り交わす基本合意書で、買収金額や独占交渉期間など大枠の条件を定めます。法的拘束力は限定的ですが、交渉の方向性を固める意味合いが大きいです。
LOIはあくまで仮合意のため、後の工程で条件変更や破談もありえます。DDとの関係性や、変更が生じる仕組みを把握しておきましょう。

1-5.クロージング

クロージングは、最終契約の締結や株式・資金の受け渡しを経て、M&Aが正式に完了するプロセスを指します。ここで初めて買い手が対象企業の経営権を得ます。
クロージング直前でも条件交渉や金銭的トラブルが起こり得ます。最後まで気を抜けないことがM&Aの実務の特徴です。
2.M&A業界の選考で問われやすい実務用語
M&Aコンサルタントは、案件獲得(オリジネーション)からデューデリジェンス、契約締結、PMI支援など幅広く関わります。以下の用語は実務フローの理解を確認するうえで選考時に頻繁に問われます。
2-1.オリジネーション(案件創出)

オリジネーションは、新規M&A案件を発掘する活動です。後継者不在の企業や資金調達を検討している企業など、潜在的ニーズを探し出して案件化します。
オリジネーションは営業力とマーケット分析力が問われるため、選考では「自分の営業経験やネットワークをどう活かすか」をアピールすると良いでしょう。
2-2.ソーシング(候補先の探索)

ソーシングは、譲渡企業や買収企業の具体的な候補先をリストアップ・アプローチする工程です。業界理解や企業データベースの活用が重要となります。
ソーシング=“入り口”なので、調査能力・コミュニケーション能力が求められます。仮説検証のやり方を明確に話せると印象が良いでしょう。

2-3.エグゼキューション(実行支援・遂行)

エグゼキューションとは、LOI締結後からDD、最終契約、クロージングまでのプロセスをマネジメントし、スムーズに遂行する業務です。専門家との連携やスケジュール調整がメインとなります。
プロジェクト管理や交渉力が問われるため、選考では「類似のプロジェクト経験があるか?」といった質問がされやすいです。
2-4.コールドコール(新規アプローチ)

コールドコールは、未接触の企業オーナーに直接電話を入れ、M&Aのニーズを探る営業活動です。オリジネーションやソーシングの初期段階で活用されます。
コールドコールへの抵抗感が少なく、具体的な成功事例を持っている人は実務でも強みとなるでしょう。
2-5.ピッチング(提案活動)

ピッチングは、クライアントに向けてM&Aのメリットや具体的スキームを提案し、契約獲得を目指す活動です。プレゼン能力や論理構成力が試されます。
ピッチングの巧拙が案件化のカギを握るため、財務・事業知識を踏まえて提案できるかがコンサルとしての力量を示す場面になります。
2-6.選考でよく問われる業界構造・営業フロー関連や案件開拓のキーワード
- FA(Financial Advisor)
一方(買い手または売り手)のみを担当するアドバイザリー。利益相反リスクが低い。 - 仲介
売り手と買い手の両方を一社で仲介する形態。調整役として効率的に進めやすい一方、利益相反の懸念が指摘される場合も。 - 両手型
仲介企業が双方の立場で手数料を得るモデル。国内の中小M&A市場で多くみられる。
「FAと仲介の違いを説明してください」はよくある質問です。報酬体系や利益相反リスクの違いを一言で述べられると評価につながります。
- 大手証券系や銀行系のM&Aファームに比べ、特定業界や特定規模に強みを持つ小規模専門ファームのこと。
- 志望動機との関連で「なぜ大手ではなくブティックを選ぶのか?」と問われることが多い。
ブティックファームは専門性とフットワークの軽さを武器にしているため、「提案スピード」「深い業界知識」をアピールポイントとするケースが多いです。
- 売り手・買い手候補の洗い出しや、案件優先度を決めるためのプロセス。
- 選考では、「ターゲティングの基準設定能力」や「リストアップ後の優先順位づけ」が見られやすい。
企業規模や業種、財務状況などを基準にリスト化し、アプローチの順番をどう決めるかはコンサルの腕の見せどころです。
- インバウンド
売り手・買い手が「自発的に」アドバイザーに相談・依頼してくる案件。 - アウトバウンド
アドバイザーが「外から」企業にアプローチして発掘する案件(コールドコールなど)。
案件の出どころでアドバイザーの立ち回り方が変わります。インバウンド案件は早期クロージングしやすい傾向がありますが、競合相手も多い点が特徴です。
- 地方や中小企業で深刻な経営課題となっており、「後継者不足をM&Aでどう解決するか?」が近年の主要テーマ。
- 選考でも「地方企業の存続」「事業継承」への理解を問われる可能性大。
後継者不在問題は業界特有の論点として、コンサル志望者にとっては意欲・社会的意義をアピールできるネタにもなります。
- M&A業界の選考では特定業界の知見を深めることが重要視される。
- 志望動機やアサイン理由で「なぜその業界が得意・興味があるのか」を答えられることが選考では差別化要素となり得る。
製造業・IT・ヘルスケアなど、専門領域に強いブティックファームも多いです。自分の経験や関心がどう活かせるかを具体的に話すと好印象を与えられます。
3.M&A後の統合フェーズ(PMI)に関する用語
M&Aの成立がゴールではなく、PMI(Post Merger Integration)と呼ばれる統合プロセスでシナジーを最大化する必要があります。ここでも選考時によく問われる用語を確認しましょう。
3-1.PMI(Post Merger Integration)

PMIは、買い手企業と売り手企業の組織・文化・システムを統合していく過程です。ここが上手くいかなければ、せっかくのM&Aが無駄になってしまうリスクがあります。
統合後の人材マネジメントやコミュニケーション設計について語れると、コンサルとしての総合力をアピールできます。

3-2.シナジー(Synergy)

シナジーとは、M&Aによってもたらされる相乗効果のことです。クロスセルやコスト削減、研究開発の共同化など、1+1を2以上にするためのアイデアを実行します。
シナジーを定量化する指標(売上増、コスト削減額など)や、実現までのロードマップを考えられるかどうかもポイントです。
3-3.アーンアウト(Earn-out)

アーンアウトは、M&A後の業績達成度合いに応じて、売り手企業のオーナーへ追加報酬を支払う仕組みです。経営者が買収後もビジネスにコミットするケースで多用されます。
トラブル防止のために業績評価基準を明確化する必要がある点を説明できると、理解度が高い印象を与えられます。
4.さらに押さえておきたいバリュエーション・法務関連用語
選考では、企業価値評価の考え方や基本的な法務リスクへの理解を問われることも。深い専門知識までは要求されない場合が多いですが、キーワードを知っておくだけで質疑応答がスムーズになります。
4-1.バリュエーション関連用語

- DCF法(ディスカウント・キャッシュ・フロー法)
企業の将来キャッシュフローを現在価値に割り引いて算定する代表的手法。 - EBITDA(Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation and Amortization)
税引前利益に利息・税金・減価償却費を加算した指標。企業の経常的な収益力を測るのに便利。
「DCF法の概算プロセスを説明してみてください」といった質問が出ることがあります。簡単な計算式や手順だけでも把握しておくと便利です。
4-2.法務・コンプライアンス関連用語

- 表明保証(Representations and Warranties)
売り手が「財務諸表に誤りがない」「隠れ負債がない」などを契約上保証すること。 - コベナンツ(Covenants)
契約当事者が遵守すべき義務・約束を列挙する条項。
海外企業とのM&Aでは英語の契約書を扱うことも多いです。表明保証やコベナンツのニュアンスを把握していると、法務面の素養があると判断されやすいです。

5.M&A専門の転職支援サービス「M&A JOB BOARD(エムアンドエージョブボード)」を活用しよう

M&A業界の選考は、専門用語の理解だけでなく「企業のカルチャー」「選考形式の違い」を知っておくことが非常に重要です。またM&A業界での転職は情報が限られ、かつ競争率も高いため、専門のエージェントを活用することで転職成功率が格段に高まります。そこでおすすめなのが、業界特化のエージェントの活用です。
5-1.マンツーマンの選考対策が受けられる
M&A JOB BOARDでは、専門アドバイザーによるマンツーマンの選考対策を実施しています。ケーススタディ型の質問や技術的なディスカッションにどう備えるかなど、実践的なアドバイスが得られます。
5-2.豊富な非公開求人と手厚いサポート
M&A JOB BOARDはM&A業界唯一の求人サイトを目指し、多くの非公開求人を保有。書類添削やヒアリングなど、きめ細やかなサポートで未経験からでも安心して応募できます。
5-3.専門アドバイザーによるキャリア相談
各企業の面接(選考)スタイル、必要スキル、社風などを熟知したアドバイザーが、個別のキャリア相談を行っています。自分の強みをどうアピールするか、どんな企業がマッチするか、一緒に考えられるのがメリットです。

スピード感が要求されるM&A業界だからこそ、プロの力を借りて効率的に選考へ臨むのは賢い選択です。
5-4.M&A JOB BOARDで転職活動を始める方法
- 登録することで非公開求人の詳細やエージェントのより手厚いサポートを受けられます。
- M&A JOB BOARD公式サイトより会員登録(無料)
- 「M&A業界に挑戦してみたいが自分の経験は通用するのか?」「もっと具体的な年収や働き方を知りたい」など、
- お電話での相談予約フォームからお気軽にご相談ください。
- 転職エージェントから連絡があり、希望日程をすり合わせてオンラインでの面談を実施します。
- 志望する企業の募集要項や年収レンジ、応募条件などを確認し、エージェントと相談しながら応募を決定。
- 気になる案件があれば、アドバイザーがさらに詳しくご説明します。
- 求職者向けの求人一覧ページを確認し、自分の条件に合う案件を探してみてください。
興味のある求人への応募書類作成、面接対策をアドバイザーがサポート
年収交渉や労働条件のすり合わせ、入社日の調整など細部をサポート

迷っている方はまず相談だけでも大歓迎です。
6.まとめ
本記事では、M&A業界の選考で頻出する用語をフェーズ別・実務別に解説しました。用語の意味だけでなく、どの局面で何が必要か、なぜ重要なのかまで理解しておくと説得力ある回答ができるはずです。
最後に本記事のポイントを3点にまとめます。
本記事のまとめ
- M&A業界の選考では、基本用語+実務用語の理解が必須
NDA・IM・DDのような基礎知識に加え、オリジネーションやエグゼキューションなど現場で使われる用語も押さえましょう。 - フェーズや業界構造を踏まえた総合的理解が求められる
LOIからクロージングまでの流れや、FA/仲介/両手型の違いなど、業界構造を説明できると評価UPにつながります。 - PMIやバリュエーション面にも言及できると差別化に
「契約後の統合をどう進めるか?」「企業価値評価の基礎は?」など一歩踏み込んだ話題をアピールすると他候補者と差がつきます。
M&A業界の選考で問われがちな用語を把握したら、次は具体的な企業情報を調べてみましょう。M&A JOB BOARDでは、多数の非公開求人を扱っており、専門アドバイザーへの無料キャリア相談も随時受付中です。
ぜひ参考に、選考への準備を万全に進めてください。