M&Aの最終契約段階で必ずと言っていいほど登場する重要ワード「表明保証」。企業の買収・譲渡を成立させるうえで欠かせない概念ですが、初めて耳にすると馴染みのない用語かもしれません。本記事では、M&A JOB BOARDの転職エージェントが採用企業との面談を通じて得た独自調査をもとに、表明保証がなぜ重要なのか、その具体例や違反リスクの対処法まで詳しく解説します。
さらに、これからM&A業界への転職を検討している皆さんが知っておくべき理由や、キャリアアップに役立つ情報も盛り込んでいます。ぜひ最後まで読んで、M&A業界への第一歩にお役立てください。

転職エージェント
M&A JOB BOARD 小松﨑 資
こまつざき たすく
中央大学法学部を卒業後、株式会社コーセーに新卒入社。法人営業及び本部窓口営業に従事。販売戦略の策定やステークホルダーとの関係構築を得意とし、在籍約3年間で営業成績で上位4%に入る成果を上げる。当社へ転職後、士業求人サイト「LEGAL JOB BOARD」でトップセールスを記録したのち、M&A業界に特化した転職サービス「M&A JOB BOARD」の立ち上げにに従事。現在は、M&Aキャリア開発事業部のエージェントとして、潜在的なニーズを引き出すヒアリング力と「想像以上のキャリア提案」を武器に、担当会員様からの高い満足度を誇る。
1. 「表明保証」とは何か?

1-1. 基本概念:Representations and Warranties
表明保証(Representations and Warranties)とは、M&Aの最終契約(株式譲渡契約や事業譲渡契約など)において、売り手・買い手双方が「一定の事項が真実かつ正確である」と契約書上で明確に約束することを指します。
とりわけ売り手は、対象会社の財務情報や法務リスクに関して「虚偽はない」と保証することで、クロージング後の想定外リスクを買い手に押し付けない仕組みを提供します。
財務諸表の正確性、重要な偶発債務の不存在、法令違反リスクの開示 など
- 違反があれば損害賠償や契約解除といった厳しいペナルティが発生し得る
1-2. デューデリジェンスを補完する機能
M&Aではクロージング前にデューデリジェンス(DD)を行いますが、短期間ですべてのリスクを洗い出すのは困難です。そこで「表明保証」が、売り手の側から「情報が真実であること」を明文化し、万が一のリスクが後日発覚した場合でも買い手側が救済を受けられるように整備するわけです。
これは、DDで見落としがあったとしても、最終契約でリスクを回収するという重要な仕組みを意味します。

1-3. 「なぜ必要?」読者の疑問に回答
Q: 「デューデリジェンスで調べたのに、なぜ表明保証が必要なの?」
- A:「あらゆるリスクを100%発見しきるのは難しいため、最終的に“もし虚偽があれば売り手が責任を負う”という担保を契約で確保するためです。」
- これは買い手にとってリスクヘッジとなり、売り手にとっても“嘘をついていない”ことを示す信頼材料になります。
2. M&A実務で「表明保証」が重視される理由

2-1. リスク分配の重要交渉ポイント
表明保証は、M&A契約交渉の核心部分です。特に売り手がどこまで保証するか、買い手がどこまで責任を追及できるかは両者にとって大きな利害対立となります。
- 売り手
できるだけ責任範囲を狭くしたい。 - 買い手
できるだけ包括的に保証を受けたい。

こうしたリスク分配を交渉するうえでの攻防が、M&Aの契約詰めでもっとも時間を要する部分とされています。
2-2. クロージング条件にも深く関わる
「表明保証がすべて真実であること」をクロージングの前提条件とすることが一般的です。もしクロージング直前に虚偽が判明すれば、買い手は取引を中止(契約解除)できることが多く、言い換えれば「表明保証違反」はディールの存続自体を揺るがしかねない要素でもあるのです。
2-3. 具体的な表明保証の種類と条文例
- 例:契約を結ぶ正当な権限がある、法令や他の契約に違反しない
- 例:財務諸表が正確かつ網羅的に開示されている、隠れた債務や訴訟リスクがない
条文例(サンプル)
「売り手は、買い手に対し、本契約締結日およびクロージング日において、以下の事項が真実かつ正確であることを表明し、保証する…」という形で列挙する。

実際の契約条文は数十項目に及ぶことが多く、案件ごとのカスタマイズが必要になります。ただし「財務に関する表明保証」「法令遵守に関する表明保証」など、大枠は共通していることが多いです。
3. 表明保証違反のリスクとW&I保険活用

3-1. 違反が発覚した場合のリスク
万一、表明保証違反(契約で「真実」と約束した事項が事実と異なる)が判明すると、違反当事者(多くは売り手)には以下のリスクが生じます。
- 故意・過失の有無を問わず、違反それ自体が賠償責任を導くことが多い
- クロージング前に重大な虚偽が発覚すれば、ディール自体を白紙撤回される
- クロージング後でも損害に見合った補填を交渉される可能性がある
3-2. 発覚時の一般的な対応フロー

- 買い手は発見次第、売り手へ迅速に通知
- 原因究明、損害範囲の特定を両者+専門家で行う
- 契約に定められた範囲で請求。合意が得られない場合は仲裁・訴訟へ
- 和解成立や、表明保証保険による補填で解決する場合もある
3-3. 表明保証保険(W&I保険)とは?

Warranty & Indemnity Insurance(W&I保険)は、表明保証違反による損害賠償リスクを保険でカバーする制度です。
- 売り手用保険
売り手が加入 → 売り手が負う賠償リスクを保険会社が肩代わり - 買い手用保険
買い手が加入 → 売り手に請求する代わりに保険会社へ保険金請求が可能
- 近年は中堅・中小企業のM&Aでもクリーンエグジットのニーズが高まり、W&I保険の需要が増えています。
4. M&A業界転職の視点から見る「表明保証」の重要性

4-1. 交渉スキル・リスク管理能力のアピール材料に
M&A業界で頻繁に議論される「表明保証」の仕組みやリスク配分について理解していると、転職面接で「リスク管理の素養」「交渉視点」をアピールできます。
「財務デューデリジェンスと表明保証の関係をどう捉えるか?」
「免責の範囲設定をめぐる売り手・買い手の対立をどう調整するか?」
こうした質問に対応できるだけでも、採用側からは「M&A実務に関心が高く、具体的に学んでいる」と評価されやすくなります。
4-2. 高収入・やりがいと専門知識の相関性
M&A業界は高い報酬水準が魅力ですが、その背景には「高度な専門知識を駆使して案件をまとめる」というハードルの高さがあります。
- 表明保証の論点をうまく整理・交渉できる人材は、成果報酬型の働き方でも大きな成果を出しやすい
- 経営者に対して契約条項のリスクを的確に説明し、最終的に双方が納得できる着地点に導くプロセスは、やりがいも大きい

4-3. 未経験者でも押さえておきたい基礎知識
たとえ未経験でも、下記のようなポイントを学んでおくとスムーズに業務に入れます。
表明保証の根拠となる財務数値を読む力
契約書条項・免責事項などの基本用語
契約締結~クロージングまでの進行管理
下記の記事ではM&A業界未経験者向けにおすすめの書籍を解説しています。

5. 図表で解説:表明保証の流れとリスク管理

5-1. 表明保証条項の一般的な構成
主な構成 | 内容例 |
---|---|
当事者に関する保証 | 当事者が適法に設立・存続しているか、契約締結権限があるか等 |
財務関連の保証 | 財務諸表の正確性、簿外債務の不存在、重要取引先との関係 |
法務・コンプライアンス関連 | 訴訟・行政処分リスク、許認可取得状況、反社会的勢力との取引の有無 |
特殊リスク関連 | 環境汚染、知的財産権、個人情報保護等、業種特有リスク |

これらの構成を網羅的に検討しつつ、案件独自の論点を追加していくのが実務の流れです。
5-2. 表明保証違反~救済フロー

買い手から売り手へ通知
損害額算定・交渉
→解決。
合意できない場合は訴訟へ。
5-3.表明保証保険(W&I保険)の仕組み

- 買い手が保険料を負担
- 表明保証違反の損害が生じた際、売り手ではなく保険会社に対して直接保険金を請求できる
- 売り手が保険料を負担
- 売り手が負う損害賠償責任を保険でカバーする
- 特にオーナー経営者の“クリーンエグジット”を狙うM&Aで重宝される
6. M&A JOB BOARD(MAJB)の強み:転職成功をサポート

6-1. M&A業界唯一の求人サイトとしての独自ポジション
「M&A JOB BOARD (エムアンドエージョブボード)」は、M&A業界に特化した唯一の求人・転職支援サイトとして、多種多様な企業と連携しています。大手M&A仲介会社はもちろん、地域密着型の仲介ベンチャー、コンサルティングファーム、PEファンドなど、幅広い企業の求人案件が集まるのが強みです。
- 独自の非公開求人が豊富
多数の企業と連携し、大手転職サイトには掲載されていない大手仲介会社から新興ベンチャーまで求人を多数取り扱っています。 - 業界に精通したアドバイザーが支援
書類添削や面接対策だけでなく、応募企業との面談日程調整や条件交渉など、全プロセスをサポート。 - 過去の成功・失敗事例に基づくアドバイス
これまで多くのM&A仲介会社への転職をサポートしてきた実績があるため、内定獲得への最適ルートを示してくれます。
6-2. M&A JOB BOARDで転職活動を始める方法
- 登録することで非公開求人の詳細やエージェントのより手厚いサポートを受けられます。
- M&A JOB BOARD公式サイトより会員登録(無料)
- 「M&A業界に挑戦してみたいが自分の経験は通用するのか?」「もっと具体的な年収や働き方を知りたい」など、
- お電話での相談予約フォームからお気軽にご相談ください。
- 転職エージェントから連絡があり、希望日程をすり合わせてオンラインでの面談を実施します。
- 志望する企業の募集要項や年収レンジ、応募条件などを確認し、エージェントと相談しながら応募を決定。
- 気になる案件があれば、アドバイザーがさらに詳しくご説明します。
- 求職者向けの求人一覧ページを確認し、自分の条件に合う案件を探してみてください。
興味のある求人への応募書類作成、面接対策をアドバイザーがサポート
年収交渉や労働条件のすり合わせ、入社日の調整など細部をサポート

迷っている方はまず相談だけでも大歓迎です。
7. まとめ
本記事では、表明保証の基本から具体例、違反リスクへの対応、保険活用、そしてM&A転職における優位性までを解説しました。M&A契約の奥深さは「表明保証」を理解することで大きく垣間見えます。
最後に、本記事の要点を3つにまとめます。
本記事のまとめ
- ① 表明保証はM&A契約におけるリスク管理の要
デューデリジェンスで拾いきれないリスクをカバーし、買い手・売り手双方に安心を与える仕組み。 - ② 違反リスクや保険制度の理解が実務力を高める
損害賠償リスクやクロージング中止リスクをどう回避・軽減するかが重要。 - ③ M&A転職で「表明保証知識」は差別化の武器に
専門性をアピールし、高収入・やりがいあるポジションに近づく大きな一歩となる。

表明保証は難易度が高い分、学んでおくと転職市場での評価を高めやすく、実務でも大きな差をつけられます。
M&A業界を目指すなら、ぜひ今のうちからこの知識を身に付け、実際の転職活動や面接時のアピールに活かしてください。