M&A業界を志す方にとって、「着手金」というキーワードが引っかかるケースは少なくありません。「成功するかどうかわからないのに、先に支払う必要があるの?」「着手金を設ける企業と無料の企業、どちらがいいの?」こうした疑問や不安の声をよく耳にします。
そこで本記事では、M&A JOB BOARDの転職エージェントが採用企業との面談を通じて得た独自調査をもとに、着手金の仕組みからメリット・デメリット、成功報酬型との違い、さらに転職を目指す方が知っておくべきポイントを幅広く網羅します。
20代後半~30代前半でM&A業界への興味があるビジネスパーソンの方に向け、専門用語や複雑な概念をなるべく噛み砕いて解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。

転職エージェント兼マネージャー
M&A JOB BOARD 増田 将汰
ますだ しょうた
明治大学卒業後、明治安田生命に入社。個人・法人営業を担当し、上位5%の成績を達成。その後、営業所長として約50名のマネジメント経験を積む。株式会社WILLCOでは「弁護士・法務領域」と「採用コンサルティング事業」をゼロから立ち上げ、現在はM&A JOB BOARDの事業責任者として、業界に特化した転職・就職サポートを行い、業界トップクラスの実績を実現。
M&Aにおける着手金とは?基本概念と報酬体系の全体像

M&A業界における着手金とは、「M&A仲介会社やアドバイザーと契約を結んだ段階で支払う手数料」を指します。会社売却を検討するオーナー企業や買収を検討する企業が、初動の費用として支払うものです。ここでは、その基本的な定義や理由、批判の背景を紹介していきます。
着手金の定義と位置づけ
M&A仲介やアドバイザリー業務の契約(FA契約・仲介契約)を締結後、最初に生じる費用が着手金です。

「弁護士の着手金や不動産購入の際の手付金のように依頼企業側が成功・不成功にかかわらず負担することが多いです」
- 一般的に、M&Aが成約しなかった場合でも返金されません。これは初期段階での企業評価、書類作成、人員アサインなどに要するコストをカバーするため、という建前があります。
着手金が必要となる理由
M&A仲介会社は契約後、企業評価レポートやノンネームシートの作成、データ収集など多岐にわたる業務に着手します。人件費・ツール費用など多額のコストが発生するため、着手金で最初の経費を補填する意義があります。
M&A仲介会社は契約後、企業評価レポートやノンネームシートの作成、データ収集など多岐にわたる業務に着手します。人件費・ツール費用など多額のコストが発生するため、着手金で最初の経費を補填する意義があります。

「依頼企業が“本気でM&Aを進める”姿勢を示す意味合いも大きいです。着手金ゼロだと、冷やかしや情報収集だけで契約を結ぶケースが増え、仲介側がリソース配分を誤るリスクがあるからです」
着手金ビジネスを巡る批判と実態
かつては「大手仲介会社が高額な着手金を受け取り、成約しなくても儲かる仕組みになっている」といった批判がありました。依頼企業側からすれば「途中で頓挫してもお金は返ってこないのでは?」という不安があるわけです。
実際には、事前準備や企業評価などにしっかりと工数を割き、成約率を高める努力をしている仲介会社が大半です。一部、悪質な業者が過去に存在したことで「着手金ビジネス=怪しい」というイメージが広まった側面がありますが、近年は業界団体のガイドライン整備も進み、コンプライアンスを重視する企業が多くなっています。
着手金の相場と支払いタイミング

M&A仲介会社ごとに報酬体系は異なります。ここでは、一般的な中小企業M&Aの着手金がどの程度なのか、そして支払いのタイミング・返金可否などの仕組みを解説します。
中小企業M&Aでの一般的な相場
例:小規模のブティック型仲介会社では50万円程度、大手や上場仲介会社では100万円程度が通例

「企業規模が大きいと着手金が数百万円になることも。ただし最近は着手金0円を掲げる新興仲介企業が増え、相場は多様化しています」
- 無料を掲げる企業の増加
「着手金ゼロ・月額報酬ゼロで完全成功報酬のみ」というモデルを取り入れる仲介会社が台頭しています。依頼企業からすると初期コストがかからないためメリットを感じやすい反面、成功報酬率や案件選別の厳しさなど裏の事情も存在します。
支払いはいつ?返金はある?
M&A仲介会社と正式にアドバイザリー契約を結んだ時点で、着手金を一括支払いするケースが大半です。分割払いに応じる企業はあまり多くありません。
- M&Aが成約しなかった場合でも、原則的に返金はされません。
「途中でやめるから返してほしい」という要望は基本的に通りにくいです。 - 中間報酬を設定している場合は、途中で基本合意締結時に追加費用が発生するケースも。
買い手探しの段階で思わぬリスクが発覚し破談となると、すでに支払った中間金が返金されない場合も。
着手金が高い会社と安い会社の違い
高めの着手金+安定したサービス
- 日本M&AセンターやM&Aキャピタルパートナーズなど大手では100万円以上の着手金を設定することが多いです。ブランド力や実績があり、準備段階のサポートが手厚い傾向があります。
着手金ゼロ+スピード重視
- 最近はM&A総合研究所(M&A総研)などがAIやDXを活用し、短期間でクロージングを目指すモデルを構築。仲介手数料の入口ハードルを下げ、案件を獲得しやすくする戦略を取っています。
- 企業カルチャーの差
「高めの着手金をもらう会社は“プロとして準備段階の質を高める”姿勢が強く、0円を掲げる会社は“リスクフリーで広く案件を受ける”姿勢が強い印象です」
着手金あり・なし比較!完全成功報酬型との違いを図解で理解

近年、M&A仲介会社の報酬モデルは「着手金あり」と「完全成功報酬(着手金なし)」の2極化が進んでいます。ここでは、それぞれの利点とリスクを整理しご紹介します。
着手金ありモデルのメリット・デメリット
- 初期段階から深い調査・分析を行いやすい
契約締結時に費用を確保できるため、資料作成や企業評価にじっくりリソースを投入しやすい。 - 幅広い案件に取り組む姿勢
着手金がある分、仲介会社としてはリスク分散が可能。比較的難易度の高い案件も対応してくれる場合が多い。
- 依頼企業にとってリスクがある
不成立でも費用が戻らないため、売り手・買い手の心理的負担は大きい。 - 高額な先払いがネック
経営者が慎重になることも多く、案件成立までの資金繰りが厳しい企業には合わない。
完全成功報酬型のメリット・デメリット
- 依頼企業のリスクゼロ
成約しなければ一切の支払いが発生せず、まずは相談しやすい。 - 成果主義でわかりやすい
仲介会社も成約しない限り収入が得られないため、モチベーションが高い。
- 案件選別が厳しくなる
「”売れる可能性が高い”企業しか受けない傾向が強く、難易度の高い案件は対応を断られることもある」 - 成功報酬がやや高額になる場合も
初期費用をとらない分、成約時の報酬率を高めに設定している会社が多い。
報酬体系のイメージ図(レーマン方式の計算例)

以下は地方銀行系の仲介会社が公表している報酬体系の例を図表化したものです(内容は一例)。
報酬体系(例)
- 着手金:契約時50万円~100万円程度
- (不成立でも返金なし。ただし成功報酬と相殺可能)
- 成功報酬(サクセスフィー)
- ~5億円の部分:5%
- 5億円超~10億円:4%
- 10億円超~…以下逓減
- 最低報酬額:1,000万円
- 成約額10億円の場合、
5億円×5% + (10億円−5億円)×4% = 2,500万円 + 2,000万円 = 4,500万円
上記の着手金が「0円」になり、成功報酬の%が数%上乗せされるイメージです。

「資金的な負担を最小化したいオーナーにとっては魅力的。一方で、成約額が大きくなると“想定より高額な手数料”を支払うことになるかもしれません」
M&A仲介会社で働くリアル:転職先としての魅力とスキル要件
「M&A 着手金」で検索する人の中には、着手金の存在から業界への不安を感じている方だけでなく、実際にM&A仲介会社に転職したいと思っている人も多いはずです。
ここではM&A仲介会社の仕事概要や必要なスキル、未経験スタートでも活躍できる理由を掘り下げます。
M&Aアドバイザーの仕事内容とやりがい
仕事の流れ
金融機関との連携や直営業で売り手・買い手候補を開拓

契約締結後、着手金を受領し企業価値評価などの初期分析を実施
両社トップの面談をアレンジし、条件交渉をリード
大枠で合意した後、詳細調査をサポート

実際の株式譲渡や資金決済の手続き完了で成功報酬発生
- 若手でも案件をまとめ上げれば高収入につながる可能性が高いのも、この業界特有のメリットです。

「企業の将来と経営者の人生に深く関わり、事業承継課題を解決したり、新しいビジネスシナジーを創出する手助けができる点が最大の魅力」
未経験でも活躍できる理由
- 法人営業経験者なら
「経営者と話すコミュ力」や「交渉力」 - 金融機関出身者なら
「企業財務の基礎知識」や「顧客分析力」 - コンサル出身者なら
「課題解決能力」や「提案資料の構成力」
大手仲介会社やFAS系ファームでは、入社後に実践的な研修プログラムを用意しているケースが多いです。未経験者が一からM&Aプロセスを学び、先輩の案件をサポートしながらステップアップできます。
必要スキル・経験とキャリアパス
- 財務会計知識
簿記2級レベルの知識があると強い - コミュニケーション力
経営者へのヒアリングや交渉が主業務 - プロジェクト管理
複数のステークホルダーを調整する力
- ジュニアアドバイザー(1~2年目)
先輩の案件サポート - メインアドバイザー(3~5年目)
一貫担当で高収入も狙えるフェーズ - マネージャー(5~10年目)
チームを率いて大型案件を指揮 - 役員・起業
経験を活かし独立や幹部ポジションへ

「M&A業界は成果主義色が強く、若手でも大きな成功報酬を得るチャンスがあります。逆に成果が出せないと厳しい面もありますが、そのぶん“頑張りが報われる”やりがいは大きいです」
着手金をめぐる転職者エピソードとMAJBを使うメリット
ここでは、着手金が転職先選びの決め手になったリアルなエピソードをご紹介し、あわせてM&A JOB BOARD(MAJB)を活用するメリットと注目の求人情報カテゴリーをお伝えします。
着手金が鍵だった内定先比較のエピソード

悩み
大手仲介会社(着手金あり)と新興ベンチャー(着手金ゼロ)の両方から内定を得て迷った
- ブランド力やサポート体制が整い、案件をじっくり進める傾向
- 着手金を受領し、途中の企業評価や調査にコストをかけられる
- 完全成果報酬型でスピード感ある営業スタイル
- 成果が出るまで収入ゼロのため、厳選した案件に集中
Aさんは最終的に「じっくり型が合いそう」という理由で大手を選択

「着手金の有無は、会社の経営理念や働き方にも直結しており、自分の性格や価値観に合ったモデルを選ぶのが重要だと感じます」
M&A JOB BOARDでの転職支援の強み

M&A業界への転職を検討する際に、ぜひ利用を検討してほしいのがM&A業界に特化した唯一の求人・転職支援サイトである「M&A JOB BOARD(エムアンドエージョブボード)」です。
大手求人サイトでは埋もれがちなM&A仲介関連のポジションを数多く掲載しており、特化型プラットフォームならではの強みを持っています。
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大手・中堅仲介会社や地方銀行子会社の独占求人など、市場に出てこないレア枠が多数。 - キャリア全体を見据えたアドバイス
M&A業界での年収アップやワークライフバランス、将来的に独立を目指す方まで、個々の志向に応じたサポート。

迷っている方はまず相談だけでも大歓迎です。
注目求人カテゴリー紹介
- Big4系コンサルのアドバイザリー部門や独立系FASファーム
- 財務デューデリジェンスやバリュエーションを中心とした案件が多く、会計知識を活かしたい人におすすめ
- 地方銀行系列や地方特化型の仲介会社
- 事業承継ニーズが高まる地域企業のM&Aを支援するケースが多く、地域経済に貢献したい方に最適
- 大手上場仲介会社や急成長ベンチャーでのマネージャー・幹部候補
- インセンティブが大きく、20代でも年収1,000万円超を目指せる可能性あり
まとめ
以上のポイントから、M&A業界における「着手金」の存在意義やメリット・デメリットがおわかりいただけたのではないでしょうか。実際に転職を目指す方は、会社選びの際に「自分のスタイルや価値観に合うか」を見極めるのが大切です。
最後に、本記事の要点を3つにまとめます。
本記事のまとめ
- 着手金はM&A仲介会社が初期コストを回収し、依頼者の本気度を確保するために存在する
- 着手金あり企業は手厚いサポートを提供しやすいが、依頼企業側の負担リスクがある
- 完全成功報酬型は依頼企業のリスクが低い反面、案件選別や報酬率が厳しくなる傾向がある
また、M&A仲介会社やアドバイザリーファームの働き方そのものはハードな側面もある一方で、大きなやりがいや高収入を狙える魅力があります。未経験でも挑戦できるチャンスがあり、長期的なキャリアアップを目指しやすいのも特徴です。
ぜひ専門アドバイザーの力を借りて情報収集を進め、自分に合った最適な転職先を見つけてください!