M&Aの実務経験を積んだビジネスパーソンが、次に選ぶべきキャリアは何か? その問いに答えるのが本記事です。M&Aでは財務分析や交渉力、経営陣との折衝など、多岐にわたるスキルを身に着けることができます。しかし、「今の激務を続けるべきか?」「年収を維持・向上させながらキャリアを広げたい」「M&A以外で活かせる専門性は?」といった不安が拭えない方も多いのではないでしょうか。
本記事では、M&A JOB BOARD(MAJB)の転職エージェントが採用企業との面談を通じて得た独自調査をもとに、M&A経験者が“別の業界”へ転職する際のポイントや具体的な選択肢を詳しく解説します。

転職エージェント兼マネージャー
M&A JOB BOARD 増田 将汰
ますだ しょうた
明治大学卒業後、明治安田生命に入社。個人・法人営業を担当し、上位5%の成績を達成。その後、営業所長として約50名のマネジメント経験を積む。株式会社WILLCOでは「弁護士・法務領域」と「採用コンサルティング事業」をゼロから立ち上げ、現在はM&A JOB BOARDの事業責任者として、業界に特化した転職・就職サポートを行い、業界トップクラスの実績を実現。
1. M&A経験が高く評価される理由

1-1. 稀少なスキルセットを一挙に取得している
M&Aのプロセスを経験すると、以下のようなスキルを総合的に身につけることができます。
- 財務・会計
バリュエーション(企業価値算定)や財務諸表分析 - 交渉力
株主・経営陣・投資家など、異なる立場のステークホルダーを調整 - プロジェクトマネジメント
複数の専門家やチームを束ね、期限内に成約を目指す - 経営視点
企業買収・売却後のシナジー策定や経営戦略とのリンク
これらの能力は、他の専門領域でも即戦力として高く評価されやすいです。

M&A業界は短期間で高度なビジネススキルを習得しやすい“加速装置”のような側面があります
1-2. 事業戦略に不可欠な存在
近年、事業会社や投資ファンドのみならず、コンサルティングファームや金融機関、さらにはIT・製造業など、多岐にわたる業界でM&Aを軸とした事業拡大が進んでいます。そのため「M&Aの重要性を理解し、具体的なプロセスを回せる人材」は希少価値が高まっています。
1-3. 幅広いキャリアパスへつながる
M&Aという切り口で多くの企業と関わったり、経営トップ層と議論を重ねたりする経験は、将来的に経営企画や投資、新規事業立ち上げなどへ転身しやすい下地にもなります。

激務である反面、経験の多彩さでは一般的な営業職やバックオフィスとは比較にならない武器を得られます
2. M&A経験者の転職トレンドと転職市場の実態

2-1. 転職市場で高まる「M&A経験歓迎」のニーズ
大手転職サイトやエージェントの公開求人を横断的に調べると、「M&A仲介経験者歓迎」の求人が年々増えています。
特に事業会社の経営企画部門や投資銀行、PEファンド、総合商社などでの募集が目立ち、複数のディールを同時に回せる経験者が即戦力として好まれる傾向があります。
2-2. 年収水準は多様化
M&A経験者が転職した場合の年収水準は大きく振れ幅があります。たとえばM&A仲介の場合、仲介手数料(成功報酬)によって収益が左右されやすいため、成約案件の数や規模によって一気に年収が上がるケースがある反面、案件が成立しないと大きく収入が落ち込むリスクも否めません。
一方で、事業会社の経営企画やPEファンド、コンサルファームのFAS部門などは、成果に応じたボーナスはあるものの、ベース(固定)給が比較的高い水準で安定しているのが特徴です。
700〜1,400万円程度
- 固定給を中心に、会社業績や役職に応じたインセンティブを得られる場合が多い
1,200〜3,000万円+Carry(成功報酬)
- ベース給与が高めに設定されており、投資案件が成功すればさらに報酬が上乗せされる仕組み
900〜1,800万円
- 会計・財務の専門知識が必須となる分、ベース給与がしっかり確保されやすい

転職先によって給与体系が“成功報酬重視”か“高いベース給+業績連動ボーナス”かで大きく異なるため、自分のキャリアプランに合った収入構造を見極めることが大切です
2-3. 求められるのは“M&A経験”プラスα
近年はM&A関連の実務スキルだけでなく、PMI(M&A後の統合プロセス)や事業開発・投資の観点を持てる人材が重宝されています。
- PMI経験
買収後の組織統合や施策実行をリードできる - 新規事業開発
M&Aに留まらず、企業成長戦略をトータルで考えられる。 - 国際案件対応
クロスボーダーM&Aに対応できる語学力・異文化理解
3. M&A経験者が注目する転職先:代表的な業界・職種5選

ここでは、「M&A仲介経験者」の転職先で上位に挙がってくる人気の転職先を5つに絞ってご紹介します。
3-1. 経営企画
- 企業の経営戦略・投資判断を内側からリードできる
- 社長や役員など、経営層との距離が近い
- 事業投資(M&Aやジョイントベンチャーなど)を含め、経営全体に関わるため視座が高まる
- バリュエーション、財務デューデリジェンス(DD)の経験
- 戦略的な交渉力とステークホルダー調整力

年収レンジは700〜1,400万円程度がボリュームゾーンですが、大手総合商社やメガベンチャーでは1,500万円以上も可能です。
3-2. プライベート・エクイティ(PE)ファンド
- 投資実行からEXIT(売却)まで一貫して関与できる
- 成果連動報酬(Carry)が高額になりやすい
- 投資先企業の経営改善や成長戦略策定まで幅広く携われる
- 財務モデリング、投資判断に必要な分析力
- クロージングまでの一連のM&Aプロセス知識

年収は1,200〜3,000万円+Carryと非常に高額ですが、ハードワークが続くことも多い業界です。上昇志向が強く、“自分の力でリターンを勝ち取る”スタイルを好む方には最適なフィールドです)
3-3. FAS/アドバイザリーファーム
- M&Aの専門家として財務DDやバリュエーション、PMIなどに特化できる
- 経営課題を数字やロジックで解決するため、専門性が高まる
- 会計士・税理士・弁護士などと協業しつつ、領域横断的なプロジェクトに参画可能
- 企業評価やレポーティングの経験
- 特に監査法人系FASでは、会計知識とM&A実務が融合して重宝される

年収は900〜1,800万円が一般的です。大手外資系戦略コンサルのアドバイザリー部門であれば、2,000万円超えのケースもあります。
3-4. 事業会社のBizDev/新規事業責任者
- M&Aに関連しつつ、事業開発という切り口で企業の成長を支援する
- 事業部や関連部署と連携し、具体的なサービス・製品開発にも関与できる
- ワークライフバランスが比較的良い企業もあり、“激務”からの脱却を期待できる
- 社外とのアライアンス交渉力
- 経営層への提案やレポーティング能力

年収は700〜1,300万円程度が中心ですが、上場企業や急成長ベンチャーでは上振れの可能性も高いです。
3-5. 独立(仲介・FA業務の立ち上げ、起業など)
- 自分の人脈とM&Aスキルを直接活かし、高収益を得る可能性がある
- 案件の大小や手数料体系を自ら設計できるため、自由度が高い
- 個人や小規模チームで完結するケースもあり、自分の裁量で動ける
- 案件ソーシングからクロージングまでの一連のプロセス管理
- 信頼できる弁護士・会計士などのネットワーク

独立はリスクとリターンが表裏一体なので、人脈と営業力に自信がある方に向いています。
4. 転職成功事例:M&A経験者がキャリアアップを果たすプロセス

ここでは、実際にM&A業界での経験を活かし、別の業界や職種へキャリアチェンジした事例を3つご紹介します。
4-1. 大手M&A仲介の営業から事業会社の経営企画へ

After:大手事業会社の経営企画(年収450万円+残業大幅削減)
- 仲介営業として培った「財務分析+営業力」を“社内コンサル”として言語化
- 面接ではM&Aの成約件数だけでなく、企業価値算定の実務、PMI段階での補助実績もアピール
- 経営企画で求められる視点と自分の経験を結び付けて説明

給与アップは小幅でも、業務負荷が大幅に減りつつキャリア幅が広がるため、若手には魅力的な選択肢
4-2. M&Aアドバイザリーファームのアソシエイトから国内PEファンドのVPへ

After:国内PEファンドのVP(年収2,000万円+Carry)
- DD(デューデリジェンス)や財務モデリングの高度なスキルを強調
- 案件リードの実績(投資家や売り手企業との調整、クロージング成功数など)を具体的な数値で提示
- 「PMIに興味があり、投資先企業の経営を深く支援したい」というモチベーションをアピール

PEファンドはM&Aアドバイザリー出身者のロールモデル。採用側もフィット感を重視します。
4-3. 証券会社のM&Aアドバイザリー担当から商社系CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)へ

After:総合商社のCVC投資担当(年収1,100万円+海外出張手当等)
- クロスボーダー案件で培った英語力と海外企業との交渉経験を強調
- スタートアップ投資やアライアンスの知識習得への意欲を示す
- 売却・買収のスキーム設計だけでなく、「投資後のバリューアップをいかに行うか」という事業視点を面接で説得力ある形で説明
5. 転職成功のための4ステップ|M&A経験の強みを最大化する方法

5-1. 自己棚卸し
- 案件フェーズ別に自分が担当した業務や成果を洗い出す
- 「FA業務のうち、実際にどの部分をどの程度リードしていたか」などを定量化し、書類や面接で具体例として話せるように整理
5-2. キャリアゴール設定
- 「投資領域でキャリアを積みたい」「経営に深く携わりたい」「ワークライフバランスを重視したい」など、優先度をはっきりさせる
- ゴールが曖昧だと、求人選択の軸がブレて転職活動が長引きがち
5-3. スキル補強
- 英語力:クロスボーダー案件に強みを持つためのTOEICスコアや実務上のプレゼン力
- PMIや事業開発知識:買収後の統合プロセスや、新規事業立ち上げの基本フレーム
- 業界知識:希望する転職先業界のビジネスモデルや主要プレイヤー
5-4. 専門エージェント活用
- 非公開求人の情報が豊富なエージェントを活用し、応募先企業のインサイトを収集
- 選考対策(書類添削・面接練習)で第三者の客観的視点を得ることで書類通過率・内定率が上がる

M&A業界専門のエージェントや、実績豊富な転職サービスを活用するだけでも情報格差が大きく埋まります

6. M&A JOB BOARD(MAJB)のサポートが選ばれる理由

6-1. M&A業界唯一の求人サイト
MAJBはM&A案件や関連ポジションに特化した求人を数多く保有する、M&A業界唯一の求人サイトです。公開求人はもちろん、「PEファンド」「新規事業開発担当」などの非公開求人も豊富で、幅広いキャリアパスを検討できます。
- 独自の非公開求人が豊富
多数の企業と連携し、大手転職サイトには掲載されていない大手仲介会社から新興ベンチャーまで求人を多数取り扱っています。 - 他業界ポジションも網羅
「M&A仲介」だけでなく、PEファンド、事業会社の経営企画、VC、コンサルファームなどの求人情報を多角的に扱っています。M&Aのスキルを活かして“別の業界”へ飛び込む際にも頼れる存在です。 - 過去の成功・失敗事例に基づくアドバイス
これまで多くのM&A仲介会社への転職をサポートしてきた実績があるため、内定獲得への最適ルートを示してくれます。
6-2. M&A JOB BOARDで転職活動を始める方法
- 登録することで非公開求人の詳細やエージェントのより手厚いサポートを受けられます。
- M&A JOB BOARD公式サイトより会員登録(無料)
- 「M&A業界に挑戦してみたいが自分の経験は通用するのか?」「もっと具体的な年収や働き方を知りたい」など、
- お電話での相談予約フォームからお気軽にご相談ください。
- 転職エージェントから連絡があり、希望日程をすり合わせてオンラインでの面談を実施します。
- 志望する企業の募集要項や年収レンジ、応募条件などを確認し、エージェントと相談しながら応募を決定。
- 気になる案件があれば、アドバイザーがさらに詳しくご説明します。
- 求職者向けの求人一覧ページを確認し、自分の条件に合う案件を探してみてください。
興味のある求人への応募書類作成、面接対策をアドバイザーがサポート
年収交渉や労働条件のすり合わせ、入社日の調整など細部をサポート

迷っている方はまず相談だけでも大歓迎です。
7. まとめ
M&Aで培った経験とスキルを活かせるフィールドは、決してM&A業界だけにとどまりません。将来のキャリアビジョンを明確にし、専門エージェントのサポートを上手く使って転職活動を進めれば、自身の市場価値を最大化するチャンスは大きく広がります。
最後に、本記事の要点を3つにまとめます。
本記事のまとめ
- M&A経験者は転職市場で圧倒的な希少価値を持つ
交渉力・財務分析・経営視点を併せ持つ人材は限られており、多様な業界から求められています。 - 転職先はPEファンドや事業会社など多彩な選択肢がある
投資や経営企画、事業開発、独立など、M&A経験を起点にキャリアを広げやすい時代です。 - 転職成功の鍵は“自己棚卸し”と“専門アドバイザーの活用”
案件実績や交渉経験を応募企業の課題に置き換えて説明できるよう準備しましょう。選考対策にはMAJBなどのエージェントも活用を。
次のキャリアで輝く未来に向けて、ぜひ今から行動を始めてみてください。